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狭い日本にゃ住み飽きた
海の彼方に夢がある
欧州航路と洒落込んで
おいら商船校の愚連隊
ああ、わびしき我が姿
なんてかっこいい歌がありましたっけ・・・。船乗りって外国にタダで行けるし、優雅な仕事だなあなんて思われがちですが、そうでもないんですよ。船は飛行機と違って2〜10時間もあれば他国に行けるというものでもなければ、簡単にそこへ達する訳でもありません。例えばロスへ行くとして、どんなに早い船でも2週間はかかるのです。その間は完全に世界から閉ざされて自分が存在します。乗組員が20名いたとしても、それぞれの持ち場は異なるし、3直制交代制をとる船での人間交流は少ないのです。要するに孤独です。 そして、なによりも自然が過酷に立ち向かってきます。「板子一枚、下は地獄」という話を聞いたことがあるでしょうか? 七洋どこへ行っても嵐は付き物なんです。低気圧の墓場と言われる冬の北太平洋、うねりの波長は150mを越え、高さは50mにも達します。船は船首から波に潜り、それはブリッジに到達して目の前で砕け散ります。その衝撃は想像を絶し、ブリッジが前後に揺れて、ログ(速力計)が後進を示すこともあります。「これぞ男の仕事」などという余裕はありません。恐怖は持続して襲い掛かって来るのです。視界は30mにも満たない。三角波が船の周囲に発生して、先端が暴風にスプレイする。レーダーのパルスは波に反射して、スコープ上は一面真っ白になっています。海面反射除去装置のダイアルを許容範囲最大にしても無理がある。盲目状態に不安が募り冷や汗が流れます。それでも船は絶え間無く木の葉のように揺れて、どこかを掴んでいないとまともに立ってはいられない。ふと、クリノメーター(傾斜計)に目を移せば両弦で60度のローリング(横揺れ)です。まさしく死は目前にあると言っても過言ではありません。こんなことが1週間続くことも稀ではなく、船と積荷、乗組員の安全を護るため、船乗りたちは日夜神経と体力をボロボロにしながら当直に専念しているのです。 とはいえ、嵐が過ぎ去り、嘘のように晴れ渡った海に出会うと気分は爽快になります。美しく弧を描く水平線、穏やかな波、心地よい潮風。私はあの海を忘れられません。 船乗りという職業は、船を下りた今でも大好きです。 |
さて、船乗りについてですが、船乗りと一言で言っても色々です。 船には、外航船(外国と日本、または外国間)と内航船(日本国内を航行)の2種類があります。用途からは、一般商船(貨物船、客船、コンテナ船、タンカー、自動車運搬船)、漁船、フェリー、作業船、練習船、はしけ等々に分類できます。また、船乗りの職務は部署や免状のあるなし、階級によって大きく異なります。 以下にモデルケースとして、外航商船(遠洋区域・総トン数5000トン以上)の人員配置と職務などを簡単に記します。 よく、「何も船長(せんちょう)、言うこと機関長(きかんちょう)」などと言ったりしますが、そこまでになるには相当の険しい道のりですし、それなりに大切な仕事はあるのです。 |
職名 | 英名 | 略称 | 呼称 | 国家資格 | 主たる職務 | |
甲板部 | ||||||
職員 | 船長 | Captain | C/P | キャプテン | 一級海技士 (航海) |
・船舶総責任者 ・航路選定 ・狭水道操船 ・離着岸操船 |
同上 | 一等航海士 | Chief Officer | C/O | チョッサー | 二級海技士 | ・4〜8航海当直・操船 ・荷役責任者 |
同上 | 二等航海士 | Second Officer | 2/O | セコンドッサー | 三級海技士 | ・0〜4航海当直・操船 ・チャート関連 ・航海計器 |
同上 | 三等航海士 | Third Officer | 3/O | サードッサー | 三級海技士 | ・8〜12航海当直・操船 ・ログブック ・衛生管理者 ・C/O付き雑用 |
部員 | 甲板長 | Boatswain | B/S | ボースン | なし | 甲板部保守整備の長 |
同上 | 甲板手A | Quartermaster | Q/M | クォーターマスター | なし | 舵取り&保守・整備員 |
同上 | 甲板手B | -do- | -do- | 同上 | なし | 同上 |
同上 | 甲板手C | -do- | -do- | 同上 | なし | 同上 |
同上 | 甲板員 | Sailor | O/S | セーラー | なし | 保守・整備員 |
機関部 | ||||||
職員 | 機関長 | Chief Engineer | C/E | チエンジャー | 一級海技士 (機関) |
・機関部総責任者 |
同上 | 一等機関士 | First Engineer | 1/E | ファーストエンジャー | 二級海技士 | ・4〜8機関当直・機関の運転 ・メインエンジン担当 |
同上 | 二等機関士 | Second Engineer | 2/E | セコンドエンジャー | 三級海技士 | ・0〜4機関当直・機関の運転 ・発電機担当 |
同上 | 三等機関士 | Third Engineer | 3/E | サードエンジャー | 三級海技士 | ・8〜12機関当直・機関の運転 ・補機担当 ・1/E付き雑用 |
部員 | 操機長 | No.1 Oiler | NO.1 | ナンバン | なし | 機関部保守整備の長 |
同上 | 操機手 | No.2 Oiler | NO.2 | ナンバトゥ | なし | 機関部保守整備 |
同上 | 操機員 | wiper | W | ワイパー | なし | 機関部保守整備 |
無線部 | ||||||
職員 | 通信長 | Radio Officer | R/O | 局長 | 一級海技士 (通信) |
無線通信業務 |
司厨部 | ||||||
部員 | 司厨長 | Chief Steward | C/S | シチョウジさん | なし | 調理の長 |
同上 | 司厨員 | Cook (Steward) | Cook | コックさん、オヤジ | なし | 調理員 |
上記したものは、一昔前の人員配置と考えて下さい。現在では、衛星通信の発展に伴い、1997年に国際条約が改正等されて、モールス信号器の備え付けが免除されるようになりました。その結果1999年からは無線通信士を乗船させる義務もなくなって、航海士がこれにかわる免許(新設)を取得し業務を行っています。(官庁関係の船舶、特殊船などには現在も通信士が乗船している) また、部員クラスの人数も削減傾向にあります。 |