今や、就任して16年になる西谷浩一監督の常套句だ。
試合前、大阪桐蔭の指揮官・西谷は必ずと言っていいほど「粘り」という言葉を使う。4試合で49得点。今大会中もっとも攻撃陣が活発な敦賀気比(福井)を前にしても、それは同じだった。
「敦賀気比の打線は勢いのある打線だと思いますが、忘れてはいけないのは、エースの平沼(翔太)君が打たれていないということ。平沼君をどう攻略できるか。最後まで『粘り』抜きたいと思います」
西谷がいつも以上にその言葉に力を込めたのは、この日の試合展開を想定していたからだ。ある程度は打たれる。しかし粘り抜けば、勝機は見えてくるはずだ、と。
戦意を根こそぎ奪うような、敦賀気比の序盤の攻撃。
試合は1回表から敦賀気比打線が大阪桐蔭に襲いかかる展開から始まった。それは、敦賀気比がこれまでに見せてきた、対戦相手の戦意を根こそぎ喪失させるかのごとき壮絶な先制攻撃だった。
1死から2番・下村崇将が右翼前安打で出塁すると、3番・浅井洸耶が左翼前安打で続く。4番・岡田耕太は、それこそ、ボールを叩き潰すかのような快音を残して中前安打を放ち満塁とした。5番・峯健太郎が左翼前適時打で1点を先制すると、6番・御簗翔が、右翼スタンドに豪快な満塁本塁打を叩き込んだ。
初回一気に5点を奪う強烈な先制パンチ。さすがの西谷も、これには参ったと回想する。
「ある程度、打たれるだろうっていうのは、試合前から言っていました。だから、投手陣には、ロングだけは避けるようにして、ヒット4本を連ねられても良いという話はしていました。それが、いきなりロングを打たれたので、ちょっと厳しかったですね」
ところが、その裏、大阪桐蔭打線も反攻に出る。
甲子園の風 バックナンバー
- 完封負けも「しょうがないじゃない」。 日本文理“大井節”は最後も穏やか。 2014年8月24日
- 「機動破壊」が壊した常識と精神。 健大高崎が甲子園に残した“衝撃”。 2014年8月22日
- 昨秋覇者・沖縄尚学が失った「底力」。 “ライアン”山城、夏の暑さに散る。 2014年8月22日