青色防犯灯を導入するか否か?導入実験と地域住民評価
奈良市秋篠台自治会の取り組み(2)
奈良市秋篠台地区は戸建て住宅が200軒ほど並ぶ、閑静な住宅街です。2004年度自治会長、直原氏が策定した自治会の計画書「将来に向けて明るい町づくりのために 安全の種を蒔き、安心の花を咲かせよう—防犯・防災モデル地区構想—」とそれに基づく取り組みが評価され(詳しくはこちら)、2005年に警察庁の「地域安全ステーション」モデル事業実施地区に選定されました。
自治会長を退任した直原氏は、防犯・防災委員として、3年半にわたり青色防犯灯設置実験を行いますが、そこに地域住民による評価の仕組みを取り入れました。
青色防犯灯 設置実験 地域住民アンケート 集計データ
直原氏は綿密な青色防犯灯設置実験の計画を立てました。そして、実験に対する評価を地域住民の一人ひとりに求め、その結果をもとに「秋篠台自治会では青色防犯灯の本格的設置をしない」という方針を明確に示しました。そのステップを紹介します。
ステップ1:地域住民に青色防犯灯の長所を広報する
2005年当時、青色防犯灯は日本で初めての導入であり、一般の人には馴染みがないものでした。もちろん、防犯上どのような効果が期待できるのかも分かりません。そこで、青色防犯灯の長所について解説する広報を作成して地域住民に周知し、青色防犯灯設置実験の協力依頼をしました。
ステップ2:実験計画を立て、アンケートをとる
秋篠台地区を7つのブロックに分け、1ブロックにつき3ヶ月間ずつ青色防犯灯を順番に点灯させて行きました。青色防犯灯を3ヶ月設置した後に、その通りに面する住民にアンケート調査票を配布し、その効果、印象などについて評価をして貰いました。これを7期に渡っておこない、約2年かけてすべてのブロックの調査票を集めました。
ステップ3:アンケートを集計し、設置方針を決める
アンケートを集計し、評価値を点数化した結果、青色防犯灯の設置に否定的な意見が上回りました。当時、マスコミでは青色防犯灯が大々的に報道され、秋篠台地区にも多数の記者が取材にきており、全国的にも青色防犯灯の設置地区が増えていましたが、直原氏は地域住民評価の結果を重んじ、2007年に「今回の青色防犯灯の実験を終了する。今後は、当自治会の防犯活動のシンボルであった青色灯を、現在の青色蛍光灯の寿命の続く限り、防犯に最も効果的な地点を選んで固定設置する」との方針が決まりました。
直原氏コメント(2011年4月)
青色防犯灯だけの効果は低く、防犯パトロールやその他防犯活動との複合効果であると思います。また、防犯意識を高めるためのシンボルとして役立つと思います。しかし、青色防犯灯も設置時期が長くなれば防犯意識も風化していくものです。これはどんなことにも言えます。
確かに、大通りに面する空き地に青色防犯灯を設置した結果、ゴミのポイ捨てや不法駐車が少なくなり、一定の効果が認められました。しかし、当時は装飾用の青色防犯灯しかなかったため照度も低く、また住宅地内に設置するには好ましくないという住民評価結果を受け入れ、実験に用いられた36w蛍光灯の導入は見送りました。ただし、将来、白色灯と同じ明るさの青色照明灯が開発・製造できれば、喜んで再び設置実験を引き受けたいと思っています。