「報道しない自由」などの批判と、それに対する反論の議論に思うところがあったので、連投。
情報の「出し手」と「受け手」の意識のズレ
「○○が報じられてない」「『報じない自由』の行使だ」という批判に対し、「いや、ちゃんと報じてるから」とか「お前かて全部の報道見たワケちゃうやろ」という反論は至極正しいのだけれど、結局それって報道の出し手側と受け手側の意識のズレの問題なんじゃないかと。
情報の出し手側の認識としては、取材は行っているし記事も出してる。けして隠しているわけではない、ということなんですが、受け手側としてはそう見えないわけです。
「出してるかもしれないが、あまりにも扱いが小さい」「どこに載せてるかわからない」というような。毎日毎日隅から隅まで紙面に目を通す人ばかりじゃないわけで、そりゃそうだなと。
「編集権」=「情報の取捨選択・序列付け」を行う権限
新聞にせよテレビにせよ、紙面の量は限られているし時間は有限なので、どうしても情報の取捨選択や序列付けが必要になります。このような情報の「取捨選択」や「序列付け」 を行う権限を、「編集権」と呼びます。
※ちなみに、橋下市長の発言に関する報道と「編集権」について書いた拙ブログ ⇒ 橋下発言と報道 - Fuzzy Logic
要するに、情報を吟味した上でニュースバリュー(ニュースの価値)を判断して、扱いの大きさを決めるのは、メディア側の「編集権」という特権なんですね、という話。
これを考えるだけで、新聞やテレビなどのメディアが「中立」であるのは大変困難なことだということがわかります。ニュースの価値判断には、どうしても判断する側の「価値観」が紛れ込んでくるからです。
メディアは意識のズレ=受け手側の多様なニーズに応えきれていない
さて、受け手側が抱いている「○○の扱いが小さくない?」という意識のズレに対し、メディアは「編集権」を盾に「うるせえバカ」と言えるわけですが、本当にこれからもそれでいいのか、という点には議論の余地があります。それは(本当に今更ですが)ネットが登場したからです。
ネットが脅威なのは「紙幅」や「尺」という報道量の制限が無いということです。いくらでも記事を掲載することができ、記事の価値判断は個々のアクセス数やツイート数、「いいね!」が勝手にしてくれる。メディアの「編集権」が通用しない世界なのです。
余談ですが、そういう「編集権」を根拠に「新聞はなくならない!」という主張もあります。ニュース価値を「アクセス数」なんかが決められるワケがない、結局は新聞の伝え方が一番効率がいいんだ!という主張です。
そういう考え方は、「メディアの価値判断こそが至上である」という、まさにメディアの傲慢だろうと個人的には思いますが、確かに現状「編集権」に替わる機能を備えたネットニュースメディアはまだ無いように思います。
検証される「編集権」と、それに鈍感なメディア
ブログにも書きましたが、現代はネットによってメディアがどのように「編集権」を行使したか、一般の人が容易にチェックできる時代(一次ソースや元動画など、加工前の情報を手にいれることが比較的容易)です。メディアは正に「裸の王様」状態であると言ってもいいと思います。
そういう時代にあって、メディア側が「編集権」にあぐらをかいているような意識でいるのは少々鈍すぎる、と思うわけなのです。だからといって大衆に媚びろって言ってるわけではないんですが、やり方を改めなければならないのは事実でしょう、と。
今新聞は色々な規制に守られていますが、いつまでそれが続くか。守られなくなった時にどうなるか。消費者のニーズに応えられないメディアは遅かれ早かれ滅ぶだけだ、と個人的には思っていますが。
まとめ
7月10日の連投ツイートのまとめでした。「編集権」なんかはよく知られている話なので、知ってる人には退屈な話だったかもしれません。
twitterを見てると、記者の人と一般の人がそんな話題でやりあってたりするのをたまに目にします。「お前らはこれを報じてない」と言われた時にメディア側の人が「いや、報じてる。お前が見てないだけ」って返しがちなんですが、そういうのを見ると関係ないのになぜかもにょります。
要するにその人の価値観とその媒体の編集方針とのズレの問題なんですが、こういうメディア劣勢の時代にあってそういう返しを平気でしてしまう感性の鈍さみたいなものを感じてしまって、なんだかなあ。。。となるわけです。まあ、「嫌なら見るな」的なアレなんですが。
新聞やテレビなどのオールドメディアがまだまだ健在なのはわかるんですが、そういう細かなニーズが一般に生じてきていること、それにメディアが応えきれていない(だから若い人に見放される)ことはもっと重く受け止めるべきなんじゃないでしょうか。
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