米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設工事に向けたボーリング調査が、海上保安庁や沖縄防衛局による厳戒態勢のなか、移設予定地の名護市辺野古の海で始まった。

 小船やカヌーによる海上での抗議行動に対し、体を押さえたり、羽交い締めしたりして強制排除する当局の姿勢に、県民は反発を強めている。

 きのう、辺野古の米軍キャンプ・シュワブのゲート前で主催者発表で3600人が参加し、移設反対の抗議集会があった。

 沖縄各地から県民がバス30台以上を連ねて集まった。家族連れも目立つ。経済界からの参加者の姿もあった。

 「この海に海保の船がびっしりと浮いている様子は、69年前、沖縄を占領するために軍艦が取り囲んだ光景と同じ」

 集会で稲嶺進・名護市長はそう指摘した。

 実際に「海から艦砲射撃を受けた沖縄戦を思い出す」と話す年配者もいる。その心情を、政府は想像してみるべきだ。

 海保は海に張り巡らせた浮き具に抗議船を近づけない理由を「危険だから」とする。一方で、浮き具の内側では米軍関係者とみられる人々が海水浴をしているのに、警告もしない。

 県民には、沖縄に米軍基地を置くことの説明に政府が使う「抑止力」が信じられない。

 軍事技術が高度化したいま、沖縄に基地を集中させるのが必要不可欠なことなのか。新型輸送機オスプレイを佐賀空港に暫定移転させる計画は、必ずしも沖縄に集中させる必要がないと政府自らが認めたことになるのではないか。

 すべてのもとは、国土の0・6%しかない沖縄に、米軍基地の74%が集中する不公平な実情にある。そもそも沖縄の海兵隊は、復帰前に反基地運動が激化した本土から移駐した。

 この不公平を承知のうえでなお、沖縄に新たな基地をと言うのなら、少なくとも辺野古の掘削調査は中断し、県民の疑問に誠実に答えるべきだ。

 沖縄では11月に県知事選があり、辺野古移設が最大の争点になるとみられている。政権側が知事選を有利に戦いたいという意図で調査を強行したとすれば、現状では逆効果だというほかない。

 22日に移設断念の意見書を可決した那覇市議会に続き、県議会も抗議決議を検討する。保守陣営も含め、政府との溝は深まる。力ずくの権力行使は禍根を残すばかりだ。沖縄に理解される説明ができないなら、辺野古移設は凍結するしかない。