外務省:在外公館に「定員割れ」 本省に要員取られ
毎日新聞 2014年08月22日 22時01分(最終更新 08月23日 02時31分)
◇アフリカ、中南米、中東の3地域では8割にも
アフリカ、中南米、中東の3地域で外務省の在外公館に「定員割れ」が相次いでいる。いずれも安倍晋三首相が重視する地域。原因を探ると、華やかな外交のイメージとはおよそかけ離れた「役所の論理」が見えてきた。【鈴木美穂】
外務省が7月、自民党「無駄撲滅プロジェクトチーム」(座長・河野太郎元幹事長代理)に開示した資料によると、在外公館の総定員3488人に対し、実際に勤務しているのは3378人(6月1日現在)。定員割れは110人に上り、3地域の計68大使館のうち55館、実に8割が定員に満たない状態だった。
「本省と在外公館、あるいは在外公館同士の異動には、引き継ぎなどを考慮して発令から着任まで最大45日間の猶予が認められており、一時的に定員割れが生じやすい」というのが外務省の言い分。しかし、これでは3地域に偏っている理由を説明できていない。
政府は2005年度から国家公務員の定員削減を進めている。各府省は毎年8月、まず削減案を示したうえで、新規業務などに応じた増員を別途要求。総務省(来年度分からは内閣人事局)が査定し、定員が決まる。役所側には決定権がない。
外務省の14年度の定員は5787人。04年度比約7%増で、定員削減の流れの中、優遇されてきた。それでも、近年は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉など所管業務が膨らみ、人事担当者は要員確保に頭を悩ませているという。
同省の定員は本省分と在外公館分の2本立て。他省庁の視線もあって、本省の定員を大幅に増やそうとすれば、代わりに在外公館の定員を削るしかないが、予算要求のたびに「外交力強化」と称して在外公館拡充を訴えてきた手前、なかなか踏み込めない。そこで編み出したのが、見かけ上の定員はそのままに、在外公館から本省に人を移す苦肉の策だった。
在外公館で浮かせた110人のうち何人が本省で勤務しているか、同省は明らかにしていない。しかし、こうした手法は査定の形骸化につながりかねず、「在外公館が定員割れしてもやっていけるなら、そもそも定員の設定がおかしい」(河野氏)という批判への反論も難しい。同省は来年度から定員の適正化を図る方針だ。
◇定員割れしている大使館(6月1日現在)
<アフリカ>
エジプト、南アフリカ、ケニア、サウジアラビア、エチオピア、ナイジェリア、アルジェリアなど28カ国