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来年6月に迎えるもう一つの消費税危機

消費税が8%に増税されても、すぐに税収が増えるわけではない。多くの企業は毎月消費税の中間納付を行っているが、中間納付の金額は、前期の確定申告額の1/12の金額と定められている。つまり今多くの企業が納付しているのは消費税5%の時代に準拠した金額なのだ。

 消費税増税3%分のお金がどこにあるかと言うと、一時的に企業が預かり金としてストックしていることになる。多くの企業は3月決算を採用しているため、消費税の確定申告は6月初頭になる。最長で14ヶ月以上に渡ってお金が企業にストックされることになる。

 消費動向で消費税増税の悪影響がすぐに出ながら、タイムラグのために国の歳入増に繋がっていないとなると、こんなバカな話があるかということになるが、企業が業績回復に先行して賃金改善をするための財源としてこれを利用するのであれば悪い話ではない。企業は一時的にストックしている預かり消費税を活用して、業績回復に先行して賃上げしろという意見が出てもおかしくないのだが、消費税納付の仕組みがあまり知られていないせいか、そういう意見はお見かけしない。

 ただ、実際には中小企業の多くで預かり消費税の活用が行われていると予想される。中小企業の多くは大企業と比較して業績回復が遅れているが、大手企業が賃上げを行う中で業績回復を待たずして賃上げをしないと社員の離職を招き、ただでさえ深刻な人手不足に追い打ちをかけて人手不足倒産の危機に直面する。

東京新聞:中小、苦渋の小幅賃上げ 人手不足回避へ:経済(TOKYO Web)

 皮肉なことに人件費率の高い事業ほど預かり消費税の額が多い。企業は売上消費税から仕入や支払で発生した消費税を控除した額を納付するが、人件費は非課税のため人件費率の高い事業は控除する額が少ないからだ。

 人件費率の高い産業の代表格である運輸事業に於いては、更に燃料高が経営に追い打ちをかけている。多くの企業が人件費と燃料費の支出増を預かり消費税でしのいでいるのではないかと予想される。

 これらの業界で未だに業績回復のニュースが聞かれない中、来年6月を迎えるといったいどうなるのか?非常に心配である。

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