広島土砂災害:市が水防計画守らず 市長「検証が必要」

毎日新聞 2014年08月23日 02時30分(最終更新 08月23日 09時31分)

広島市の主な土砂災害現場
広島市の主な土砂災害現場

 ◇死者41人、行方不明者は47人

 20日未明に広島市北部を襲った豪雨による土砂災害で、広島県などが土砂災害警戒情報を発表してから約3時間後に発令された避難勧告のタイミングについて、市水防計画では同情報発表などを目安とするよう明記していたことが22日分かった。同計画は、土砂災害発生の各段階に応じて市がとるべき対応などを記しており、実際の経過と比べると、市の対応が後手後手となった状況が浮かぶ。死者が2人増え41人になったことが広島県警等への取材で分かった。また行方不明者は安否確認が進んだため47人となった。

 市水防計画は、土砂災害警戒情報のほか、大雨注意報▽大雨警報▽災害発生−−などの段階ごとに、市や住民の行動目標を記している。例えば、注意報発表(19日午後4時3分)段階では、土砂災害の危険がある区域に防災無線などで注意喚起を促すよう定めている。しかし今回、市が住民に注意喚起のメールを送ったのは、警報発表(19日午後9時26分)後の午後9時50分だった。そのほか、おおむね計画に沿った行動はとっていたものの、避難勧告発令をはじめ全体に対応が遅かった。

 同市の松井一実市長は災害発生当日の20日、記者団に対し、降雨が局所的だったことなどから「避難勧告まで出すかどうかちゅうちょした」と対応の遅れを認めた。だが、22日の記者会見では、避難勧告について「市のマニュアル通りにやった」と釈明。水防計画で定めた行動から時間は遅れたものの、実行したことを強調したとみられ、「手順のあり方は検証が必要だと思う」と話した。

 水防計画は市地域防災計画の1部門。水防法に基づき、土砂災害や河川の氾濫などの水害に備えるため、自治体による警戒・広報活動の内容や、避難対策に関することなどを定めている。

 この日の捜索は警察や自衛隊、消防が約2700人態勢で当たり、新たに川に流された高齢者の遺体が見つかった。被災地では2次災害の恐れがあるとして一部地域に避難指示を出した。安佐北区と安佐南区に出された避難勧告も継続中で、約2000人が避難所での生活を強いられている。【金秀蓮、石川裕士】

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