イラク:モスク襲撃、73人死亡…組閣協議が中断

毎日新聞 2014年08月23日 11時11分(最終更新 08月23日 11時38分)

イマムワイス村
イマムワイス村

 【カイロ秋山信一】イラク中部ディヤラ県のイスラム教スンニ派のモスク(イスラム礼拝所)に22日、武装集団が押し入り、礼拝者に向かって無差別に銃撃した。中東の衛星テレビ局アルジャジーラによると、少なくとも73人が死亡した。アルジャジーラなどはシーア派民兵による襲撃と報じているが、イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」による犯行との見方もあり、情報が錯綜(さくそう)している。

 イラクでは、シーア派の新首相候補アバディ氏を中心に宗派横断的な挙国一致政府樹立に向けた組閣などの協議が進められている。だがスンニ派の連邦議会議員らは22日、モスク襲撃をシーア派民兵による犯行だとみなし、実行犯らが拘束されるまで協議から一時離脱すると表明した。

 イラクからの報道によると、22日昼ごろ、ディヤラ県イマムワイス村のモスクで金曜恒例の集団礼拝時に自爆とみられる大きな爆発があった後、武装集団がモスクに乱入し、礼拝者に向かって乱射した。モスクには約150人の地元住民らがいたという。

 イマムワイス村は首都バグダッドの北東約120キロにあり、周辺では6月以降、イスラム国と政府側の戦闘が続いている。アルジャジーラなどは、事件直前に何者かの攻撃を受けたシーア派民兵らが、スンニ派住民を疑い、報復としてモスクを襲った可能性を報じている。一方、イスラム国が、地元住民から協力を拒まれたため、見せしめとして襲撃したとの情報もある。

 イラクでは2003年のフセイン政権崩壊後、シーア派(人口の約60%)とスンニ派(同約20%)の宗派間抗争が激化。シーア派中心の政府に不満を抱くスンニ派の一部はイスラム国に協力している。混乱収拾に向けて挙国一致型の政府樹立が急務だが、今回の事件が宗派間の対立をあおり、悪影響を及ぼす恐れがある。

 米国務省によるとケリー米国務長官は22日、ジバリ外相と電話協議し、挙国一致内閣の樹立作業促進を呼びかけた。

最新写真特集