忘れられる権利:京都地裁判決 EU判決と比べてみた 依然高いハードル

2014年08月23日

京都市内の男性が、大手ポータルサイトを運営する「ヤフー」に対し、名誉毀損やプライバシーの侵害にあたるとして、過去の逮捕のニュースが表示されるリンクの削除などを求めた請求を棄却した京都地裁の判決文
京都市内の男性が、大手ポータルサイトを運営する「ヤフー」に対し、名誉毀損やプライバシーの侵害にあたるとして、過去の逮捕のニュースが表示されるリンクの削除などを求めた請求を棄却した京都地裁の判決文

 大手ポータルサイト「ヤフー・ジャパン」で自分の名前を検索すると、過去の逮捕記事が表示され、名誉を傷つけられたとして、京都市の男性が同サイトを運営する「ヤフー」(東京都港区)に対し、記事リンクなど検索結果の表示差し止めなどを求めた訴訟で、京都地裁=栂村明剛(つがむら・あきよし)裁判長=は8月7日、請求を棄却した。EU司法裁判所(ブリュッセル)が米グーグルにリンク削除を求めた「忘れられる権利」判決との関連で、国内裁判所の判断が注目されていたが、地裁は、検索エンジンによる逮捕歴のリンク削除が認められる余地を限定的に考える判断を示した。原告は、判決を不服として大阪高裁に控訴しており、上級審での判断が注目される。【尾村洋介/デジタル報道センター】

 ◇事案の概要

 男性は、2012年11月、女性を盗撮したとして京都府迷惑行為防止条例違反の疑いで逮捕され、執行猶予付き有罪判決を受けた。その後、ヤフーのサイトで自身の名前を検索すると、自身の逮捕に関する記述が表示され、名誉毀損(きそん)とプライバシーの侵害にあたるとして、損害賠償と記事の見出しなどリンク表示の差し止めを求めた。

 京都地裁とEU司法裁判所の二つのケースは、原告が(1)ニュース記事をウェブサイトに掲載しているパブリッシャー(新聞社など)ではなく、検索エンジンで記事へのリンクを表示しているプラットフォーム会社(ヤフーやグーグル)を訴えていること(2)事実が生じた時点からの状況変化(京都地裁では執行猶予判決が出たこと、EU司法裁判所では原告が債務を返済し終えたこと)も、リンク削除を求める根拠としている−−点で共通点がある。

 EU司法裁判所のケースでは、「忘れられる権利」を根拠づけるEUデータ保護指令の解釈を巡り争われた。日本はこうした直接的な規定はなく、京都地裁では「名誉毀損」「プライバシー権の侵害」による不法行為(民法709条)が成立するかどうかが争点となった。原告はEU司法裁判所の判決にも言及、人格権に基づき「憲法上の幸福追求権に由来する個人の名誉、プライバシー保護の観点から、本件差し止め請求が認められる」と主張した。

 ◇判決

 地裁判決は「名誉毀損」「プライバシー侵害」とも成立しないか、違法性が阻却されるとして、原告の主張を退けた。

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