【大規模観察】クラリスロマイシン処方は心疾患死亡のリスク上昇(RR 1.76)と関連(BMJ 2014; 349: g4930)

August 22 [Fri], 2014, 9:50
Use of clarithromycin and roxithromycin and risk of cardiac death: cohort study

【大規模観察】クラリスロマイシン処方は心疾患死亡のリスク上昇(RR 1.76)と関連(BMJ 2014; 349: g4930)

2012年にNEJMでアジスロマイシンが死亡率増加と関連している、というショッキングな発表がなされましたが、今度はクラリスロマイシンについて。

デンマークの大規模データを用いた研究。
40–74歳で7日間の外来抗菌薬投与を受けた患者を対象とし、投与後30日までの心疾患による死亡をプライマリアウトカムとしている。
抗菌薬としてはクラリスロマイシンが16万人、roxithromycinが59万人、ペニシリンVが436万人。
だいたい同じような疾患(上気道炎、下気道炎など)を対象に用いられる抗菌薬が選ばれた。

結果、100万処方あたり、心疾患による死亡はクラリスロマイシンで約100件、roxithromycinで約50件、ペニシリンVでも約50件で発生しており、クラリスロマイシンで有意に高率であった。

また、年齢、併存疾患などで調整しても、ペニシリンVのリスクを1とするとクラリスロマイシンでは1.76(1.08–2.85)、roxithromycinで1.04(0.72–1.51)とクラリスロマイシンで高リスクであった。

調整後の絶対リスク差は100万処方あたり37件であり、約3万処方で1件の心疾患死亡を増やすという計算になった。

サブグループでみると女性では特にリスクが高く(RR 2.83)、男性ではそうでもなかった(RR 1.09)。
しかし、心疾患リスクでわけてもlow, medium, highでは明らかなリスクの差は認められなかった。

ということで、クラリスロマイシンの処方は心疾患による死亡率上昇と有意に関連していた、という結論。

大規模データの宿命というか、個々の患者データが粗く、調整しきれていない因子がある可能性はあるが、これだけ小さなリスク差はこの規模のデータでしか検証できないから仕方ないのかもしれない。
2012年NEJMのアジスロマイシンの論文(アメリカから)でも心疾患死亡は100万処方あたりアジスロマイシンで85人、アモキシシリンで32人発生と似たような結果が出ているし、ある程度信頼性はあるのかもしれない。

とりあえずこの論文からのポイントは
・クラリスロマイシンは1ヶ月以内の心疾患死亡をわずかに増やす可能性がある
・なんとなくのクラリスはやめましょう
ということで。

【補足】
というか、上気道炎や下気道炎において外来でのクラリスの出番は基本的にほとんどないと思う。
上気道炎ではそもそも抗菌薬は大多数で不要。
必要となる少数例としてはGAS咽頭炎、ぶりかえす副鼻腔炎が代表的であるが、いずれもペニシリンが第一選択となる。
下気道炎というか肺炎では、非定型菌をカバーし損なってもあんまり予後には影響しない(特に外来治療できるくらいの軽症肺炎では)けど、肺炎球菌をカバーし損なうと致命的になりうる。
そのため、メインターゲットは肺炎球菌になるが、肺炎球菌のマクロライド耐性率が90%にもなる日本ではクラリスの出番は少ない(βラクタムとの併用薬としての使用は除いて)。
  • URL:http://yaplog.jp/dacho_okbokujo/archive/1586
Comment
小文字 太字 斜体 下線 取り消し線 左寄せ 中央揃え 右寄せ テキストカラー リンク 絵文字 プレビューON/OFF
画像認証  [画像変更]
画像の文字 : 
利用規約に同意
 X 
禁止事項とご注意
※本名・メールアドレス・住所・電話番号など、個人が特定できる情報の入力は行わないでください。
「ヤプログ!利用規約 第9条 禁止事項」に該当するコメントは禁止します。
「ヤプログ!利用規約」に同意の上、コメントを送信してください。