広島土砂災害:「硬い地質まで流出」…現地調査の専門家
毎日新聞 2014年08月22日 07時20分(最終更新 08月22日 09時39分)
土砂災害が起きた広島市北部は「真砂土(まさど)」と呼ばれる軟らかい地質が広がっているとされるが、堆積(たいせき)岩などの比較的硬い地質でも土石流が起きたとみられることが専門家の現地調査でわかった。専門家は「経験したことがない豪雨は地質に関係なく、土砂災害をもたらす」と指摘している。
広島大大学院総合科学研究科の海堀正博教授(砂防学)は20、21両日、広島市安佐南区八木地区に入った。現場では約800メートル規模の土石流があったとみられ、海堀教授はその跡を途中まで登って調査した。
海堀教授によると、土石流の跡には30〜50センチほどのごつごつした堆積岩が多く転がっていた。少量の流紋岩も確認できたという。堆積岩や流紋岩は風化したとしても粘り気が強く、その地質は比較的硬く水に流れにくいのが特徴とされる。
一方、花こう岩が風化してできる真砂土の地質の特徴とされる、1〜数メートルの大きな石は見当たらなかった。今回の現場では、真砂土とは異なる、堆積岩などの地質が短時間の豪雨によって崩され、土石流を引き起こしたとみられるという。
広島県の面積の約48%は花こう岩の地質が占めているとされ、真砂土が広く分布しているとみられる。海堀教授は「被害区域全体で見ると、真砂土の地質が崩れた現場が多いと思うが、今回の調査現場で堆積岩や粘っこい土が多かったのは意外だった。地質の硬い軟らかいではなく、異常な量の雨がもたらした災害ということが言える」と分析した。
その上で「異常な大雨はどこで発生するかわからない。真砂土以外の地質でも、山あいに住む人たちは土砂災害に注意する必要がある」と警告した。
一方、広島工業大学の熊本直樹教授(地盤工学)も21日に八木地区の現場を視察した。本格的な調査はしていないが、現場に残っていたのは粘り気のある土ばかりだったという。崩れた山肌の深さは1〜3メートルであり、山の斜面が崩れる「表層崩壊」が起きた可能性が高いと分析した。
熊本教授は「地質がどうであれ、経験したことのない雨が降れば大災害は起こりうる。どうすれば住民に早く危険を知らせて、避難してもらうかが最大の課題だ」と指摘した。【小山由宇、遠藤孝康】
◇堆積岩◇
砂、泥、火山灰などが海底や湖底に積もってできた岩。地面が隆起し山上の地層になることもある。比較的硬い地質とされ、全国に分布している。