ただ、吉田氏は「よく考えれば2Fに行った方がはるかに正しい」と部下の判断を認め、別のやり取りでは「2Fまで退避させようとバスを手配させたんです」とも語っている。自身の命令に反して部下が撤退したとの認識は示していない。
朝日報道を受け、米紙ニューヨーク・タイムズ(いずれも電子版)は5月20日、「パニックになった作業員が福島第1原発から逃げ出した」と報じた。韓国紙・国民日報も「現場責任者の命令を破って脱出したという主張が提起されて、日本版の“セウォル号事件”として注目されている」と報じている。
生前の吉田氏らを徹底取材し、『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日』(PHP研究所)を書き上げた、ジャーナリストの門田●(=隆の生の上に一)将氏は、吉田調書を読んで、「(朝日が)事実と異なる報道によって日本人をおとしめるという点において、先に撤回された慰安婦報道と図式がまったく同じではないか」と、産経に寄稿している。
■朝日新聞社広報部のコメント「吉田氏が命じたのは、高線量の場所から一時退避し、すぐに現場に戻れる第1原発構内での待機だったことは、記事で示した通りです。10キロ離れた第2原発への撤退は命令に違反した行為です」