2014.08.22  中国官僚のビヘイビアについて
    ――八ヶ岳山麓から(112)――

阿部治平(もと高校教師)


習近平政権下の中国では、インターネットに対する当局の取締はきわめて厳しい。ニュースのコメントでもプロチャイナでなければ、批判や皮肉は作戦部隊がいてすぐに消してしまう。そして政府お雇い「五毛党」による政府称賛のコメントが続々載る。地方では政府批判はもちろん、警察を批判したくらいでも発信元がわかればたちまち逮捕だ。これで中学生がやられたこともある。

ところがときどきパソコンやアイフォーンや携帯電話に、人に快哉を叫ばせるような、しびれさせるような「ブラック・ユーモア(「冷幽黙」とか「黒色幽黙」という)」がメールや「微信(facebookに似ている)」に乗ってやってくることがある。読んで面白ければ、それっとばかりに友人知人に送る。これが当局による抹消部隊の油断の隙間に生残って次々伝染してゆく。そして私ごときでも読むことができる。
ある人はこういった。「人々は生活に追われ考える力がない。官僚・知識人の多くは権力のうまみに慣れ親しんで不正を糾弾する勇気がない。上は上なり下は下なりに衰弱しているといえるかもしれない。そういう時このような文章を読むと、中国にも目の覚めている人がいるんだなあとつくづく思う」

以下に中国官僚の行動様式についての、わりによく知られた「隙間をくぐった記事」を紹介する。
――この話に出てくる「円明園放火事件」は、ご存知、1856年アロー号事件(第二次アヘン戦争)のとき、英仏連合軍が北京に侵攻し、フランス軍が離宮円明園のめぼしいものを略奪したのち、イギリス軍が「捕虜虐待」を口実に徹底的に破壊し廃墟とした、あの事件である。

円明園の放火犯をめぐって
金持のボスの息子は学校の成績が良くない。いつも教室でぼんやりしている。
ある日この子が例の如くうとうとしていると、歴史の先生が質問した。
「円明園を焼き討ちしたのは誰だったかね?」
ドラ息子はびっくりして、
「おれじゃねえ!」
先生は、彼の父親に電話した。
「息子さんは授業中、ちっとも私の話を聞きません。円明園に火をつけたのは誰か、と聞いたら、おれじゃないなんていうんですよ!」
息子が家へ帰ると、親父はバーンと一発くらわせた。

次の日親父は先生に電話した。
「ゆうべあのヤローは円明園に火をつけたと白状しました。先生、おいくらでしょうか?わたしんとこで弁償しますから」
歴史の先生は仰天して、校長に話した。
「あの子は円明園に放火したのは自分だというんです。そのうえ父親はなんと自分が弁償するっていうんですよ。全くあきれた話じゃないですか!」
校長はそれを聞くと、こういった。
「焼けちゃったものは仕方ないじゃないか。君は知らないだろうけど、あいつの親父は政治協商会議の委員で、有名な事業家で、市長の取巻きの中でも一番のお気に入りなんだ。この学校にも大分寄付してもらったし、こりゃ逆らえない。
・・・・・・だが、そういうんなら弁償して建てなおさせるか。ところで円明園はどこの管轄だったっけ?」
歴史の先生はすっかり頭にきてしまって、これを教育局長に報告した。教育局長もこういった。
「あせっても仕方がないよ。重要なのはこのニュースをよそに漏らさないことだ。うちの生徒が火をつけたなんて新聞記者に知られたら大変だ。それからあの生徒を転校させろ。あいつの親にも事件をべらべらしゃべらないように口止めして、とにかく影響を拡大してはならん」

三日目、市長が学校にやってきて、校長を怒鳴りつけた。
「このまぬけ!勉強もろくにせず知識もろくにないくせに、お前の姉ちゃんがおれに無理やり頼み込んだから、ようやくお前を校長にしてやったんだぞ。こんな面倒なことをしでかして、おれの命取りになるのがわからんのか。すぐ首にしてやるからそう思え!
……火の勢いはどうだ?抑えたのか?消防は来たのか?」
校長はいった。
「私は現場にいませんでしたから、あのくそ餓鬼がどんなふうに火をつけたか知りません」
「早く調べろ、調べてすぐおれに報告するんだ!」

四日目、市共産党委員会は常務委員会を招集した。円明園炎上によって任期満了に伴う委員改選はとりやめとなり、事件は社会不安を高めるもので治安上の特大事故と決議された。常務委員会は相談の上5ヶ条の「重要指示」を通達した。
 1)火をつけたものが誰であろうと、背後に誰がついていようと、徹底的に調べて、絶対に迷宮入り  させない。
 2)全市の消防は直ちに消火隊を組織し、現場を封鎖せよ。
 3)市党委員会宣伝部はマスコミ管理を強化しインターネットを抑え、でたらめを振りまいたり、うわ  さを信じたりするのを禁止せよ。
 4)教育を主管する副市長は即刻停職、検査処分とする。教育局長は免職、校長は職務を解く。
 5)事件を省党委員会に報告し、指示を待つ。

五日目、金持ちのボスは息子を連れて出頭してきた。公安局長はこの息子にいった。
「おい、このガキ!うまくやったな、きれいさっぱり燃やしやがって。おれたちは町中探したが何の手がかりもなかったぜ。
現場がどこだかわからないなんて、お前はどこに火をつけたんだ?白状しろ。自白すれば寛大に扱う。抵抗すれば厳罰だ」
公安局長は金持ちのボスにいった。
「李さんよ、この坊主はどうして度胸があるよ。後ろに絶対誰かいるぜ」
金持のボスは弁解した。
「局長先生、とっちめてみましたが、やつはどこにも火付けをしていません。私がこの数年いくらかカネを稼いだとみて、誰かが私をねたんでやっつけようとしているんです。ぬれぎぬです!」

――途中ですが、話はこれで終わりです。 あとは想像にお任せします。

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