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半減期が過ぎても環境から消えない放射能疫学者ハッチ博士がフクシマを調査したら(その1)

2014.08.21(木)  烏賀陽 弘道

ハッチ 確かに半減期は8日です。「環境から消滅するのには2カ月かかる」と私は考えています。だから被曝の期間を事故から「2カ月」と設定したのです。もちろん、これはヨウ素131の話で、セシウムはもっと長期間環境にとどまります。一般的には原発事故での被曝はまずヨウ素から始まり、セシウムはずっと小さな一部にすぎません。

──チェルノブイリの場合、ヨウ素の半減期8日を過ぎても、牧草~乳牛~牛乳ルートからの内部被曝が起きたのですね?

ハッチ そうです。2カ月が被曝期間だと私は考えました。

──馬鹿な質問で恐縮なのですが、半減期を過ぎても被曝は起きるのですね。

ハッチ 私も物理学は専門ではありませんので、明快にはお答えできませんが(笑)半減期を過ぎても、半分になり、またその半分になり、やがて完全に崩壊してしまうにはもっと時間がかかるのです。

──8日を過ぎれば安全だというのは誤解ですね。

ハッチ その通りです。物理学専門家がいればもっと詳しくご説明できるのですが(笑)。もっと長い時間かかります。チェルノブイリでは2カ月の期間を観察しました。

フクシマでどんな症例に注目するか

──もしハッチ博士が疫学者としてフクシマを調査するなら、どんな病気をモニターしますか。

ハッチ 疫学者であるとしても、問題に科学として取り組むなら、まず公衆衛生(public health)に注意を向けねばなりません。ヨウ素は甲状腺に取り込まれて甲状腺がんを起こします。大勢の母親が子どもについて心配しています。いま日本政府がやっているように、甲状腺がんの追跡調査は必ず必要でしょう。そして甲状腺以外のがんも必要でしょう。心理的なストレスも大きな社会的な懸念になるでしょう。除染従事者の白血病も関心が高いでしょう。子どもの白血病はフクシマでは可能性が高いとは思えない。現実的に考えると、調査対象は甲状腺と心理的ストレスでしょうか。

──チェルノブイリで甲状腺がんと白血病の2つを観察対象に取り上げたのはなぜですか? 症例が多いからですか?

ハッチ ヨウ素は甲状腺に選択的に取り込まれます。全身への均一的な被曝ではないのです。甲状腺は他の臓器より被曝の何倍も何倍も高い放射線を受け取る。ですので、一般論として、まず甲状腺がんを探します。それ以外のがんの発生は甲状腺がんよりは低い。つまり、環境にある少量のセシウムの外部被曝で起きるがんです。外部被曝を考慮に入れるなら、白血病以外の・・・そうですね、例えば乳がんなども考慮する必要がありますね。

──ピッツバーグ大学の疫学者、エブリン・タルボット教授をインタビューしました。TMI事故の健康被害を20年間調査している方です。

ハッチ もちろん知ってます。彼女は乳がんに注目してい…
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