「アイヌいない」発言:識者「帰属意識あれば民族存在」

毎日新聞 2014年08月21日 19時32分(最終更新 08月21日 21時12分)

札幌国際芸術祭の初日には、アイヌの神事「カムイノミ」が披露された。道内各地からアイヌの人たちが集まった=札幌市中央区で2014年7月19日、手塚耕一郎撮影
札幌国際芸術祭の初日には、アイヌの神事「カムイノミ」が披露された。道内各地からアイヌの人たちが集まった=札幌市中央区で2014年7月19日、手塚耕一郎撮影

 ◇帰属意識あれば民族存在 補助背景に同化強制の歴史

 「アイヌ民族なんて、いまはもういない」「利権を行使しまくっている」などと金子快之(やすゆき)・札幌市議(43)がインターネットの短文投稿サイト「ツイッター」に書き込んだ問題。金子市議は以前から行政によるアイヌへの補助施策を批判していた。金子市議の主張の問題点について識者らに聞いた。【山下智恵】

 ■なぜ補助するのか

 行政によるアイヌへの生活向上のための施策は、国が1961年にウタリ福祉対策費の予算を計上、74年から道によって住宅資金の貸し付けや雇用支援が始まった。現在は国と道、市町村が住宅資金の貸し付けや奨学金、アイヌ協会への補助をしている。

 しかし現在でも、アイヌと平均的な道民との経済格差は解消されていない。道が今年5月に発表した、アイヌが住んでいると確認された66市町村で行ったアイヌの生活実態調査(13年10月)の結果によると、アイヌの生活保護率は4・4%で66市町村の平均の1・3倍だった。大学進学率は25・8%で平均(43%)を17・2ポイント下回った。

 北海道大アイヌ・先住民研究センター長の常本照樹教授は「アイヌが貧困を強いられている背景には、日本の近代化のなかで異なる文化への同化を強制され差別された歴史がある。それを強要した側が補償する責務を負っている」と指摘する。

 ■どう証明するのか

 金子市議は「アイヌであることを客観的に証明するすべはない」と主張している。

 道アイヌ協会によると、補助施策を受ける前提となる、アイヌであるかどうかの認定は先祖の戸籍を調べ、アイヌ名を確認している。確認できない場合は、地域の人への聞き取りや、戸籍以外の文書に出てくる名前などを調べる。同協会の阿部一司副理事長は「根拠なく、認定することはない」と話す。

 ■もういないのか

 金子市議は「言葉も暮らしも同じ日本人として生活している。既に同化しており、本当のアイヌ民族はいない」としている。

 苫小牧駒澤大の植木哲也教授(哲学)は「それは同化政策を進めてきた旧土人法の発想と同じ。アイヌを同化させてきた歴史的背景を無視している」と指摘。常本教授は「民族の定義は、独自の文化への帰属意識による、主観的なもの。帰属意識をもつ人がいる以上、その民族は存在する」と話す。

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