文人商売

「ソーシャルゲーム批判」の人です。

任天堂のスマホ展開を考える



 任天堂がモバイルに参入みたいなニュースが一瞬目に入ってびっくりしたけど、全然そんなことじゃなかった。もともとPCでやってたポケモンカードのゲームをiPadに移すというだけの話だ。それでも一時期株価は上昇したらしい。「スマートデバイスでお客様とのより強いつながりを作る」という岩田社長の言葉だが、なかなか「ゲームをつくる」ととるのは難しいよね…。


任天堂株上昇、マリオカート好調やポケモンiPad展開で

 株価が上昇したというヤフービジネスのニュース。

『ポケモントレーディングカードゲーム』がiPadでプレイ可能に?ポケモン初のモバイルアプリとなるか

 こっちはゲームメディアのサイトだけど、よくまとまってる。


 もう国内ゲーム市場の半分以上はモバイルゲームで、「これからは端末の時代だ!乗り遅れるな、このビッグウェーブに!!」という株主なんかの意見も多いのだろう。まあ、任天堂はすでにオワコンとか、オレらは任天堂の倒し方知ってますよとか、色んなことを言う人がいる。その中でも、スマホでゲームつくれみたいな意見は多いのだろう。


 任天堂は世界一の規模を持つゲーム会社であると同時に、ゲームメーカーとしてはかなり変わっている

 日本ではWiiやプレステのような家庭用ゲーム機、DSやPSPのような携帯ゲーム機が人気だが、海外では必ずしも「ゲーム機」でゲームをするわけではなく、ハードウェアとして「パソコン」を使うことが多い。


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 日本は家庭用ゲーム機大国と言っていいと思う。現在の家庭用ゲーム世界シェアのほとんどは、「任天堂(WiiU)」「ソニー(プレステ4)」「マイクロソフト(Xbox one)」の3つだ。今年はソニーのプレステ4がシェアトップだが、全体的に家庭用ハードは衰退していて、かわりにモバイルが台頭してきているというのが現状。



 任天堂の特徴は「ハードウェアとソフトウェアの距離が近い」ことだと僕は思っている。ウィーリモコンやDSのタッチペンなどは、アナログな部分とデジタルの繋がりをゲームのシステムに取り入れている。つまり、ハードの「動き」を加味してソフトを開発しなければならない。ファミコンやNINTENDO64時代でも、ボタンを押すとインタラクティブに反応するアクションゲームが多かった。それはおもちゃメーカーという出自にも関係しているだろう。

 一方で、PC、プレステ、Xboxには、個々のハードウェアとソフトウェアの繋がりは密接でない。昨今の大作ゲームはPCでもプレステでもXboxでも同じように遊べるようになっていて、ハードとソフトそれぞれに互換性がある。もちろん、これが真っ当なハードとソフトの考え方で、ハードウェアはできるだけ色んなソフトを遊べたほうがいいし、ソフトウェアはできるだけ色んなハードで遊べた方がいい。ソニーは家電メーカーだし、ハードウェアとして性能が高く、DVDなど見れればさらに良い、という考え方をしている。Xboxをつくったマイクロソフトはご存知の通りPCメーカーだ。だが、任天堂はハードとソフトが密接に関わっているので、他のもので代替することができない。これはメリットでもあるしデメリットでもある。



 「ゲーム機戦争」という言葉があるが、ハードを発売するメーカーにとって、他社のゲームメーカーが自社ハードで遊べるゲームを出してくれるかどうかは死活問題だった。価格や性能がどうかとか、どのタイミングで発売するかなど色々あったが、消費者の遊びたいソフトがそのハードで出るかどうかが一番重要な要素だった。

 かつてソニーが初代「プレイステーション」でゲーム市場に参入し大勝利したとされるが、プレステには「ハード」として優れた要素がたくさんあった。「全てのゲームは、ここに集まる。」というキャッチフレーズに表れている通り、開発者支援のための機材やライブラリの提供、高性能の容量、低コストで生産できるCD-ROMなど、自社ではそれほどソフトを開発しないが、他社がプレステというハードでゲームを作ってくれることに力を入れた。


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 任天堂も、できれば色んな会社に自社のハードで作って欲しいだろうが、時代を経てゲーム全体の開発費が底上げされるなか、もうほとんどそれを諦めているような気がする。「Wii」というゲーム機で吹っ切れているように、主要なソフトを自社と子会社だけで賄って、その分他の会社にはできないことを追求しようとする方針なのかもしれない。


 今年はプレステ4がトップシェアのゲームハードになったが、インディーズでの開発環境や、ゲームプレイが共有しやすいソーシャル機能など、ゲームの総合的なプラットフォームとしての優れたハードを目指していることがわかる。当然性能も高く、海外の有名なソフトがプレステ4で遊べるというのも非常に大きいだろう。


 任天堂のハード(WiiU)は外にあまり開かれてはいない。だが、保守的であると同時に革新的でもある。「Splatoon(スプラトゥーン)」などの期待されるソフトがまだ後ろに控えているし、「amiibo(アミーボ)」にも見て取れるように、アナログとデジタルの間に新しい遊びを求めようとしている。これはハードウェアとソフトウェアを一緒に考えているからこそできることだ。自社でほとんどのソフトを賄わなければいけない苦しさがあるが、その分取り換えがきかず、他のどんなメーカーも任天堂を真似できないという強みがある。


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E3の出展映像だけで多くのゲーマーを沸かせた新しいTPSゲーム


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詳細はまだ明らかではないが、フィギュアとゲームを結びつける試み



 任天堂がモバイルゲームに参入するかという話だが、たしかに任天堂は優れたソフトウェアメーカーでもある。だが、ハードとソフトを同時に考えてきた任天堂にとって、「スマートフォンやiPadというハード」で遊べる「ソフト」だけを開発するというのは、自社の一番の強みを破棄してしまうことになる

 過去の優れたソフトをアプリとして売り出すくらいなら簡単だろうし、どうしてやらないのか、と思う株主やユーザーも多いかもしれない。スクエニやカプコンは実際にそういうことをしているが、もともとそのような会社はソフトだけを作ってきたわけで、考え方としては一貫している。だが、任天堂はアナログとデジタルを結びつける職人的な技術力と、そこからゲームを発展させてきた伝統が武器だ。他社の「ハード」を使ってソフトウェアだけを発売するというのは、その流れから外れることだし、慎重になるのも当然だろう。

 「ポケモン」や「どうぶつの森」などのソフトだって、「携帯ゲーム機という魔力」に働きかけた仕組みが多い。やろうと思えばやれなくはないのかもしれないが、「ポケモン」や「どうぶつの森」をスマホに移したときに、はたして今までと同じようなゲームとして成り立つのかは疑問だ。



 別に僕はスマホやiPadに参入することに反対しているわけでもない。本業のほうさえしっかりやってくれれば、色々としがらみもあるだろうし、あとは時流に合わせて適当にやればいいんじゃないかと思う。そういう意味で「ポケモンカード」を使うというのは悪くないかもしれない。上の記事はPCでやってたPokeonTCGをipadでもできるようにするというだけの話だが。



 ところで、僕は「ポケモンカードGB」が大好きだった!!

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 これやったことある人いる?すごいハマったんだけど。最強はカメックスの雨乞いとエネルギーリムーブを軸にしたデッキかな?ベトベトンかプテラで防がれると負けるけど。もしくは、相手のオーキド博士によるデッキ切れを狙ったバリヤード、ラッキーあたりで粘るデッキかも?


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 2はカードの枚数が増えて初代より面白かった。でも友達に借りてたからあんまりやりこんでない。3DSで新しいの出せよって声は根強いけど、出したらカード売れなくなるだろうしな…。



 失礼した。単なる妄想なんだけど、「これからはモバイルの時代だ!家庭用ゲーム機は滅びるんだ!」という株主の方などもいるのかもしれないから、落とし所として、カードゲームをアプリとして出すのはありかもしれない。

 一番の利点は「言い訳」がきくことだろう。ポケモンは子会社だし、さらに本編じゃなくカードだから、失敗してもそんなに「任天堂」のブランドを損ねたりはしないと思う。それに、ゲームとしても、従来のカードファンの層を全部持ってこれるし、当然「任天堂」のやることでもあるので話題になって注目が集まる。言い訳を確保した上で任天堂ブランドをそこそこ使えるという意味でなら、なかなか悪くないやり方だと思う。まあ、国内のスマホアプリはかなり特殊な市場だし、数字が増えていく仕組みのないゼロサムのカードゲームだとけっこう厳しいかも。

 ……という妄想を確証のない断片的な情報からできるわけだから、任天堂信者はすごいね、という話でした。

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