百貨店やスーパーなど大型小売業の販売が力強さを欠いている。消費増税前の駆け込み需要の反動減は次第に薄れつつあるものの、7月の販売実績は軒並み前年を下回った。7月は夏のボーナス支給やセールが本格化する時期ということもあり、反動減からの脱却が期待されていたが、天候不順の影響もあり、消費者心理の冷え込みは続いているようだ。
日本チェーンストア協会が21日発表した7月の全国スーパー売上高は既存店ベースで前年同月比2.1%減と、4カ月連続のマイナスだった。食料品や衣料品などすべての分野で前年実績を下回った。天候不順で客足が鈍ったほか、消費増税前に消費者が買いだめた生活用品などに反動減が残った。
減少率は6月(2.8%減)に比べてやや縮まったが、小幅な改善にとどまった。8月の販売動向についても「衣料品や住宅関連品の動きが鈍く、前年をやや下回りそう」(同協会の井上淳専務理事)と厳しい見方だ。
日本百貨店協会が発表した7月の全国百貨店売上高(既存店ベース)は前年同月比2.5%減で、4カ月連続のマイナスだった。減少幅は6月の4.6%減から2.1ポイント改善したが、月前半の天候不順で客足が遠のいた影響を吸収しきれなかった。
品目別では主力の婦人服が4.5%減。美術・宝飾・貴金属が8.0%減だった。どちらもマイナス幅は6月より縮小しており、同協会の井出陽一郎専務理事は「消費増税の反動減の影響は着実に和らいでいる」との認識を示した。
ただ同協会は6月時点では、大手企業を中心にボーナスが増えることなどを考慮して、「売上高は7月にはプラスに転じる」との見通しを示していた。想定に比べると回復は遅れている。8月も台風や豪雨の影響が販売の下押し要因となり、前半の百貨店全体の売上高は約5%減で推移したという。
大和総研の橋本政彦エコノミストは百貨店などの7月の売上高について「ボーナス増という環境を考えると、やや弱い数字だった。消費増税で実質的に所得が目減りしたことなどが、足元の消費動向の弱さにつながっている」との見方を示した。
消費増税の影響が限定的とみられていたコンビニエンスストアも、回復は途上だ。日本フランチャイズチェーン協会が発表した7月の全国コンビニエンスストアの既存店売上高は前年同月比0.7%減で、4カ月連続で前年を下回った。天候不順で客足が伸びなかった。
唯一、底堅い動きを見せたのが食品スーパーだ。日本スーパーマーケット協会など食品スーパー業界3団体が発表した7月の全国食品スーパー売上高は前年同月比0.2%増と3カ月連続で前年実績を上回った。食品は駆け込み需要が比較的少なかったうえ、畜産品の値上がりや総菜の好調が寄与した。
大和総研の橋本氏は前回の消費増税時である97年と比較して、今回は「駆け込み需要の山が大きかった分、反動減が大きかったが、所得環境は改善している」とし、反動減は収束の方向に向かうとの見方を示していた。
<消費増税前後の既存店売上高の推移>
3月 4月 5月 6月 7月
・全国百貨店売上高 25.4 ▲12.0 ▲4.2 ▲4.6 ▲2.5
・全国コンビニ売上高 2.9 ▲2.2 ▲0.8 ▲1.9 ▲0.7
・全国スーパー売上高 9.4 ▲5.4 ▲2.2 ▲2.8 ▲2.1
・食品スーパー売上高 7.0 ▲3.5 0.6 0.4 0.2
(注)増減は前年同月比、単位%、▲はマイナス、原則的に既存店・速報値ベース。食品スーパー売上高のみ3~6月は確報値。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
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