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» 2014年08月21日 14時08分 UPDATE

Amazon、電子書籍紛争の弁明でジョージ・オーウェルを引用するも──読み違えとの指摘

電子書籍の価格をめぐる米AmazonとHachetteで争いで、Amazonはその主張にジョージ・オーウェルの文章を引用したが、オーウェルの意図を読み違えたとの指摘を受けている。(ロイター)

[ワシントン 10日 ロイター]
REUTERS

 電子書籍の価格をめぐる米AmazonとHachetteの争いは、新たに文学性を帯びた企てが加わったことで、意外な展開を見せている。

 出版大手Hachette Book Groupとの争いが長引く中、Amazonは読者に対し、HachetteのCEOに意見メールを送ることでAmazonを支援するよう呼び掛けている。だが、自身の主張の裏付けととして英作家ジョージ・オーウェルに白羽の矢を立てたのは間違いだったかもしれない。

 8月8日の夕方、Amazon書籍チームからのメッセージがWebサイトに掲載されたが、Amazonはこのメッセージで「電子書籍を安くしたい」との考えをあらためて主張し、Hachetteのマイケル・ピーチCEOに意見メールを送るようユーザーに提案。指摘すべき主要なポイントを一覧にし、ピーチ氏のメールアドレスとともに公開している。

 このメッセージは、Amazonの電子書籍リーダー「Kindle」で本を直接出版している作家にもメールで送信された。Amazonはその中で、電子書籍の出現を1930年代に広まったペーパーバックになぞらえ、「当時も文学界や出版業界の多くの関係者は、安価な書籍がハードカバー本に与える打撃について同じように懸念を示していた」と指摘。その上で、作家ジョージ・オーウェルがペーパーバックに反対する陣営にいたかのように論じている。

 「ジョージ・オーウェルは、“出版社に分別があれば、ペーパーバックに対抗するために連合を組み、ペーパーバックを出版禁止にしようとするだろう”と述べている。そう、オーウェルは共謀を示唆していたのだ」と、Amazonのメッセージには書かれている。

 だがNew York Times紙が9日付けで指摘しているように、どうやらAmazonはオーウェルの発言の真意を読み違えたようだ。反全体主義的な思想で知られるオーウェルが、書籍の出版禁止を本気で提唱するとは考えにくい。

 オーウェルの発言は一種の皮肉であり、おそらく「ペーパーバックがあまりに好調なので、ペーパーバックを扱っていない出版社が動揺するのは必至」ということを言っているのだろう。

 Amazonが引用したのは、1936年3月にNew English Weeklyに掲載されたPenguin Booksシリーズのペーパーバックについての書評での発言だ。オーウェルはこの書評において、「Penguin Booksは6ペンスにしては素晴らしい値打ちがある。あまりに素晴らしいので、ほかの出版社に分別があれば、対抗するために連合を組み、出版禁止にしようとするだろう」とペーパーバックを高く評価している。

 もっとも、オーウェルは安価な書籍に完全に納得していたわけではなく、「ペーパーバックは読者にとっては好都合だが、出版社や作家にとってはそうではない」と指摘している。また、「一読者としては、Penguin Booksシリーズを称賛する。一作家としては、実にいまいましい存在だ」とも発言している。オーウェルは「1984年」や「動物農場」などの小説で最もよく知られている。

 AmazonとHachetteの広報担当者にコメントを求めて問い合わせたが、すぐには返答をもらえなかった。

 Amazonの考えでは、電子書籍の14ドル99セントや19ドル99セントという価格設定は高すぎであり、ほとんどの場合、正当化されるものではない。「電子書籍は価格が低いほうがよく売れ、結果的に収益も増え、作家に入る印税も増える」というのがAmazonの主張だ。

 この論争の一環として、AmazonはHachetteが出版する一部の書籍の配送を通常よりも遅らせたり、割引を減らしたりしている。仏Lagardere傘下のHachetteは米国で4番目に大きな出版社だ。

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