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「テニミュ」のオーディションはガチだった! 2.5次元ミュージカルの秘密(後編)
アニメ・マンガを原作としたミュージカルを国内外に普及する「日本2.5次元ミュージカル協会」が3月に発足した。
前回、日本発の舞台文化は、オリジナリティが高く、世界的に見ても価値がある、と伺った。
では、観客を魅了する2.5次元ミュージカルはどのように作られるのか。その裏側を聞いて見ることに。日本2.5次元ミュージカル協会代表理事であり、2.5次元舞台プロデューサーの草分け的存在、松田誠さんに聞いた。

▲先日行われた日本2.5次元ミュージカル協会セミナーの様子
■伝説はここから始まった
今年11年目を迎えるミュージカル『テニスの王子様(以下テニミュ)』。今の2.5次元ミュージカルをヒットへ導かせた起爆剤といえる作品だ。この作品をプロデュースした人物こそ、松田氏だ。
運動会やライブなど、ミュージカルから派生したイベントも行われる程の人気だが、初演時の様子は違ったという。
「初日でのチケット販売率は、約半分でした。観客は、ほぼ100%が原作ファンだったと思います。しかもコアなファンです。
舞台化がまだ珍しかったため、お客さんは、“チェックする”つもりで来ていた人が多かったと思います。
それが、初日の一幕が終わった休憩時間。ロビーで電話しているお客さんの姿を見ました。『すごくいいよ!』と興奮気味に話していて。それをみて『これはイケる』と確信を持ちました。
その結果、公演期間中に再演が決まり、残っていたチケットも完売。千秋楽のチケットは人気のあまり抽選になりました。
元々原作がヒットしていたので、ある程度は集客できると思っていましたが、それ以上の手応えでしたね」
では、何がヒットへ導いたのか。詳しく説明してもらった。
■原作の世界観がそのまま歌詞に
2.5次元ミュージカルには、有名役者やスターは必要ないとの話しは前回伺った通り。むしろ主役は、音楽とキャラだ。
「『テニミュ』のヒットには、ファンから強い信頼を受ける3人のクリエーターの力が大きかったと思います。特に音楽の力は大きかったですね。
原作『テニスの王子様』は、ご存じの通り9割が試合シーンです。これを舞台化するにあたり、各学校を区別でき、メリハリの利いた舞台にできたのは、音楽によるところがが大きかったと思います」
大きな貢献を果たしたという「テニミュ」の音楽。いったいどのように作られたのだろうか。
「ミュージカルには、曲が最初に作られる“曲先”と、歌詞を先に作られる“詞先”があります。『テニミュ』の場合は、詞先でした。
まず脚本・作詞の三ツ矢雄二さんが、演出の上島雪夫︎さんと相談しながら脚本を書きます。それをもとに、上島さんが、作曲家・佐橋俊彦︎さんに発注します」
まず仕上げられた、脚本と歌詞。これこそ成功への第一歩だった。
■すぐ口ずさみたくなる音楽
「脚本・作詞の三ツ矢さんは、声優もされているので、アニメファンの気持ちを本当によくわかっています。 例えば『きみの汗はクリスタル』というような、言葉のチョイス。青春ど真ん中にある、くすぐったさ。これが本当に『テニミュ』の世界観にマッチしていました。
その詞を受けて作曲を依頼するのですが、そのオーダーがまた、独特。この作品は、対戦する学校ごとに個性があります。その雰囲気に合うように、演出の上島さんが『サンバで、妖艶に』などと、学校のカラーを言い当て作曲の佐橋さんへお願いします。
そこで佐橋さんが、作曲するのですが、一発でOKというのは、ほぼないですね。何度もやりとりを重ねて完成させていきます」
しかしミュージカルでは、稽古で決まることも多い。音楽はその都度アレンジされる。
「ラリーを何回やって、歌いだすか。間奏をどれくらいの長さにするかなど、すべて稽古中に決定することが多いです。
そのため、アレンジは直前まで修正が入ります。極端な話し、完成曲を聞いたのが、舞台の上が初めてということもありました。だから昔の役者は、歌い出しが分からない、なんてこともあったようです」
そうやって何度もやりとりされ、出来上がった曲は今やカラオケに登録されるほど人気だ。
「『テニミュ』を見たお客さんは、舞台鑑賞後、カラオケに行く人が多いようです。
佐橋さんが作ってくれた曲は、ポップでとてもわかりやすいんですよ。しかも1回聞いただけで口ずさみたくなる。すごい力を持っています」
■キャストは似てなくてもOK!?
2.5次元ミュージカルでは、キャラが重視される。まるでアニメから抜け出てきたかのようなキャストは、どのように選ばれるのだろうか。
「キャストは、顔が似ているではなく、そのキャラクターの“タネ”を持っているかどうかで判断します。
もちろん、身長など骨格が似ていない場合は無理です。でも、明るくて優しい兄貴のようは役なら、明るくなきゃダメです。本質的に暗い俳優では、本人も演技に苦労すると思います。
そのことに気づかされるまで、僕は結構時間がかかりました」
以前、松田さんは、オーディションに来た人の中に、イケメンを発見した。その際、演出家の上島さんに、採用するようお願いしたという。
しかし、上島さんは大反対。
「上島さんから、『このキャラに大切なこの本質を持っていないからダメ』と言われました。
今ではその意味がよく分かります。キャラになり切るというのは、モノマネではないのです。そのキャラが人間として立ち上がった場合、どう行動するのか掴めるかどうかです。
今でも稽古場には、初代から引き継がれている原作コミックスが揃えてあります。迷ったら常に原作を読めと指導しています。そこにしか答えがないからです」
「テニミュ」には、キャストの“卒業”というシステムがある。また対戦校も変わるため、キャストの入れ替わりが多い。
しかし俳優が変わっても『テニミュ』のファンは離れない。それはそのキャラ自体にファンが魅力を感じているからである。
むしろ卒業というイベントが発生することにより、ファンは何度も劇場に足を運ぶこととなる。これこそ2.5次元ミュージカルならではの魅力であろう。
「今では、オーディションの書類審査に500人以上が応募するようになりました。審査では、本人の素養をはじめ、歌や踊り、演技力など、総合的に審査して決定します。プロデューサー、演出家はもちろん、振り付け家・歌唱指導家など専門的な目からの判断です。キャスト選びはみんな真剣です。」
■ 役者の成長も見物!
「テニミュ」に応募してくる俳優は、ほぼ初仕事という、キャリアの少ない人ばかり。成長力を見越して採用する。その中には、松田さんが驚くほどの成長を見せる俳優もいるという。
「2代目・手塚部長を演じた、城田優は、初めから歌が上手。また仁王雅治を演じた中河内雅貴は踊りが上手でした。人気が出る人には、初めから武器を持っている人が多いです。
でも予想外に人気が出る子もいます。驚いたのは、馬場徹(柳生比呂士役)。歌も踊りも何にもできなかったのに、大化けしましたね。あと、斎藤工(忍足侑士役)も!」
20歳前後と若いキャストたちは、日々舞台で成長している。ファンの見守りによって、育っていく過程もまた楽しみのひとつだ。

▲ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」も松田氏が手がけた作品
■舞台というミラクルな世界
すでに200人もの卒業生が出ている「テニミュ」のキャスト。そのうち何人かは、ミュージカル俳優として残っている。松田さんは、それを嬉しく思っているという。
「僕は舞台から学んだことがいっぱいあります。なかでも、全員で一丸となって舞台をつくるところが魅力的です。
社会の構造は、よくピラミッドに例えられます。でも、舞台の現場は、ポジションが違うだけでみんなフェアなんです。
演劇でも、お金を動かせるからプロデューサーが偉いわけではありません。舞台に関わるスタッフは、情熱が高く、ひとり一人がスペシャリストです。
全員が自分のためではなく、「作品のため」に力を出し合っています。それは仕込みのバイトでも同じことです。
ひとつのチームとして舞台を作ることはすごく楽しい仕事です」
表に出ているのは、キャストの面々だが、それを支えるスタッフもいる。みんなが作品を成功させたいと、力を合わせている。
生で鑑賞する舞台は、スタッフの頑張りが目に付きやすい。ひとつの目標に向かって力を合わせるスタッフの働きもミュージカルの魅力のひとつではないだろうか。
■演劇プロデューサーとは?
アニメ関連のコンテンツの中でも、演劇プロデューサーとは、まだ知られていない職業だ。どのようにしてその仕事に就くのだろうか。
「元々役者を目指していました。現在へ続く転機は、25歳のころです。舞台の制作を担当する会社を立ち上げたのです。『制作』とは、舞台の事務方全般を担う人のことで、1990年前後には、制作専門のスタッフはまだ珍しかったので、いろんなところから声がかかりました。でも立ち上げた当時は、それだけでは、食べていけませんでしたので、様々な仕事を掛け持ちしました。
一番初めに、2.5次元ミュージカルに携わったのは、1991年の舞台『聖闘士星矢』です」
それをきっかけに様々な 2.5次元の作品を手掛けた松田さん。仕事を通じ、あることに気がついたという。
「ある遊園地で、象がサッカーをする催しがありました。さらに、その象を操っていた人たちは、人気キャラの着ぐるみを着ていました。孫悟空や鬼太郎などです。
象がサッカーをしつつも、キャラクターの持ち味で、試合をしてもらいました。
子どもから見ると、象がサッカーをしているだけでも面白い。けれども、自分の知っているキャラ同士の対決も見られるともっと面白いですよね。
ただの象がサッカーをしても面白さは50%。キャラが演じているから親しみやすく楽しめるのだと、気がついてきました。キャラクターが演じることで面白さが倍増するんだと」
その後、『赤ずきんチャチャ』『サクラ大戦』など、多くの2.5次元ミュージカルを手がける。
演劇プロデューサーの仕事とは、ひと言でいうと、設計図を引く人だという。
「どの作品を、どのスタッフで、どの劇場で、いつ上演するのか。みんなが向かう先をつくるのが仕事だと思います。
プロデューサーは、技術的には何もできません。音楽を作れたり、照明を操ったりできません。でも、好きなクリエーターや自分がいいと思える人を集めて興業できるのが魅力です。
もちろん公演が失敗したらリスクを負いますけど」
■好きを仕事にするには?
アニメが好きで、舞台も好きな人には、演劇プロデューサーとは、うらやましい限りだ。好きなことを仕事にするにはどうしたらいいのだろうか。最後にアドバイスをもらった。
「好きなものがある人は、“好き”を突き詰めてみてはどうでしょうか。“好き”には、ものすごいパワーが秘められています。その力を使わない手はありません。
でも、アニメが好きだからといって、選択肢はアニメーター・声優だけでしょうか。変化球でもいいと思うんです。例えばウェブの制作会社に入ると、好きなキャラクターを使ってデザイン出来るかもしれません。
自分の興味を模索しつつ、粘ってみてはどうでしょうか。興味のないものにやり甲斐を見つけることは大変だと思います。少しでもチャンスのあるところを目指してみることをお勧めします」
今までなかったものを、2.5次元ミュージカルとして確立した、松田氏。ヒットにたどり着くまでには、苦労の連続だった。
だが年々集客が上がっているように、今後もますます舞台化する作品が増えるにちがいない。一度幕が開くと夢の世界へ連れて行ってくれるミュージカルの世界。まだ見ていない人は、一度足を運ばれることをお勧めする。<完>
■ 2.5次元ミュージカル協会では「2.5フレンズ」も用意
入会制限のない「フレンド会員」は、2.5次元ミュージカル情報などをメルマガなどで知ることができる。すでに募集を開始しているのでアクセスしてみよう。
http://j25musical.jp
©許斐 剛/集英社・NAS・新テニスの王子様プロジェクト ©許斐 剛/集英社・テニミュ製作委員会 (C)武内直子・PNP/ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」製作委員会2014
(写真提供=一般社団法人日本2.5次元ミュージカル協会、取材・文=武藤徉子)
前回、日本発の舞台文化は、オリジナリティが高く、世界的に見ても価値がある、と伺った。
では、観客を魅了する2.5次元ミュージカルはどのように作られるのか。その裏側を聞いて見ることに。日本2.5次元ミュージカル協会代表理事であり、2.5次元舞台プロデューサーの草分け的存在、松田誠さんに聞いた。
▲先日行われた日本2.5次元ミュージカル協会セミナーの様子
■伝説はここから始まった
今年11年目を迎えるミュージカル『テニスの王子様(以下テニミュ)』。今の2.5次元ミュージカルをヒットへ導かせた起爆剤といえる作品だ。この作品をプロデュースした人物こそ、松田氏だ。
運動会やライブなど、ミュージカルから派生したイベントも行われる程の人気だが、初演時の様子は違ったという。
「初日でのチケット販売率は、約半分でした。観客は、ほぼ100%が原作ファンだったと思います。しかもコアなファンです。
舞台化がまだ珍しかったため、お客さんは、“チェックする”つもりで来ていた人が多かったと思います。
それが、初日の一幕が終わった休憩時間。ロビーで電話しているお客さんの姿を見ました。『すごくいいよ!』と興奮気味に話していて。それをみて『これはイケる』と確信を持ちました。
その結果、公演期間中に再演が決まり、残っていたチケットも完売。千秋楽のチケットは人気のあまり抽選になりました。
元々原作がヒットしていたので、ある程度は集客できると思っていましたが、それ以上の手応えでしたね」
では、何がヒットへ導いたのか。詳しく説明してもらった。
■原作の世界観がそのまま歌詞に
2.5次元ミュージカルには、有名役者やスターは必要ないとの話しは前回伺った通り。むしろ主役は、音楽とキャラだ。
「『テニミュ』のヒットには、ファンから強い信頼を受ける3人のクリエーターの力が大きかったと思います。特に音楽の力は大きかったですね。
原作『テニスの王子様』は、ご存じの通り9割が試合シーンです。これを舞台化するにあたり、各学校を区別でき、メリハリの利いた舞台にできたのは、音楽によるところがが大きかったと思います」
大きな貢献を果たしたという「テニミュ」の音楽。いったいどのように作られたのだろうか。
「ミュージカルには、曲が最初に作られる“曲先”と、歌詞を先に作られる“詞先”があります。『テニミュ』の場合は、詞先でした。
まず脚本・作詞の三ツ矢雄二さんが、演出の上島雪夫︎さんと相談しながら脚本を書きます。それをもとに、上島さんが、作曲家・佐橋俊彦︎さんに発注します」
まず仕上げられた、脚本と歌詞。これこそ成功への第一歩だった。
■すぐ口ずさみたくなる音楽
「脚本・作詞の三ツ矢さんは、声優もされているので、アニメファンの気持ちを本当によくわかっています。 例えば『きみの汗はクリスタル』というような、言葉のチョイス。青春ど真ん中にある、くすぐったさ。これが本当に『テニミュ』の世界観にマッチしていました。
その詞を受けて作曲を依頼するのですが、そのオーダーがまた、独特。この作品は、対戦する学校ごとに個性があります。その雰囲気に合うように、演出の上島さんが『サンバで、妖艶に』などと、学校のカラーを言い当て作曲の佐橋さんへお願いします。
そこで佐橋さんが、作曲するのですが、一発でOKというのは、ほぼないですね。何度もやりとりを重ねて完成させていきます」
しかしミュージカルでは、稽古で決まることも多い。音楽はその都度アレンジされる。
「ラリーを何回やって、歌いだすか。間奏をどれくらいの長さにするかなど、すべて稽古中に決定することが多いです。
そのため、アレンジは直前まで修正が入ります。極端な話し、完成曲を聞いたのが、舞台の上が初めてということもありました。だから昔の役者は、歌い出しが分からない、なんてこともあったようです」
そうやって何度もやりとりされ、出来上がった曲は今やカラオケに登録されるほど人気だ。
「『テニミュ』を見たお客さんは、舞台鑑賞後、カラオケに行く人が多いようです。
佐橋さんが作ってくれた曲は、ポップでとてもわかりやすいんですよ。しかも1回聞いただけで口ずさみたくなる。すごい力を持っています」
■キャストは似てなくてもOK!?
2.5次元ミュージカルでは、キャラが重視される。まるでアニメから抜け出てきたかのようなキャストは、どのように選ばれるのだろうか。
「キャストは、顔が似ているではなく、そのキャラクターの“タネ”を持っているかどうかで判断します。
もちろん、身長など骨格が似ていない場合は無理です。でも、明るくて優しい兄貴のようは役なら、明るくなきゃダメです。本質的に暗い俳優では、本人も演技に苦労すると思います。
そのことに気づかされるまで、僕は結構時間がかかりました」
以前、松田さんは、オーディションに来た人の中に、イケメンを発見した。その際、演出家の上島さんに、採用するようお願いしたという。
しかし、上島さんは大反対。
「上島さんから、『このキャラに大切なこの本質を持っていないからダメ』と言われました。
今ではその意味がよく分かります。キャラになり切るというのは、モノマネではないのです。そのキャラが人間として立ち上がった場合、どう行動するのか掴めるかどうかです。
今でも稽古場には、初代から引き継がれている原作コミックスが揃えてあります。迷ったら常に原作を読めと指導しています。そこにしか答えがないからです」
「テニミュ」には、キャストの“卒業”というシステムがある。また対戦校も変わるため、キャストの入れ替わりが多い。
しかし俳優が変わっても『テニミュ』のファンは離れない。それはそのキャラ自体にファンが魅力を感じているからである。
むしろ卒業というイベントが発生することにより、ファンは何度も劇場に足を運ぶこととなる。これこそ2.5次元ミュージカルならではの魅力であろう。
「今では、オーディションの書類審査に500人以上が応募するようになりました。審査では、本人の素養をはじめ、歌や踊り、演技力など、総合的に審査して決定します。プロデューサー、演出家はもちろん、振り付け家・歌唱指導家など専門的な目からの判断です。キャスト選びはみんな真剣です。」
■ 役者の成長も見物!
「テニミュ」に応募してくる俳優は、ほぼ初仕事という、キャリアの少ない人ばかり。成長力を見越して採用する。その中には、松田さんが驚くほどの成長を見せる俳優もいるという。
「2代目・手塚部長を演じた、城田優は、初めから歌が上手。また仁王雅治を演じた中河内雅貴は踊りが上手でした。人気が出る人には、初めから武器を持っている人が多いです。
でも予想外に人気が出る子もいます。驚いたのは、馬場徹(柳生比呂士役)。歌も踊りも何にもできなかったのに、大化けしましたね。あと、斎藤工(忍足侑士役)も!」
20歳前後と若いキャストたちは、日々舞台で成長している。ファンの見守りによって、育っていく過程もまた楽しみのひとつだ。
▲ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」も松田氏が手がけた作品
■舞台というミラクルな世界
すでに200人もの卒業生が出ている「テニミュ」のキャスト。そのうち何人かは、ミュージカル俳優として残っている。松田さんは、それを嬉しく思っているという。
「僕は舞台から学んだことがいっぱいあります。なかでも、全員で一丸となって舞台をつくるところが魅力的です。
社会の構造は、よくピラミッドに例えられます。でも、舞台の現場は、ポジションが違うだけでみんなフェアなんです。
演劇でも、お金を動かせるからプロデューサーが偉いわけではありません。舞台に関わるスタッフは、情熱が高く、ひとり一人がスペシャリストです。
全員が自分のためではなく、「作品のため」に力を出し合っています。それは仕込みのバイトでも同じことです。
ひとつのチームとして舞台を作ることはすごく楽しい仕事です」
表に出ているのは、キャストの面々だが、それを支えるスタッフもいる。みんなが作品を成功させたいと、力を合わせている。
生で鑑賞する舞台は、スタッフの頑張りが目に付きやすい。ひとつの目標に向かって力を合わせるスタッフの働きもミュージカルの魅力のひとつではないだろうか。
■演劇プロデューサーとは?
アニメ関連のコンテンツの中でも、演劇プロデューサーとは、まだ知られていない職業だ。どのようにしてその仕事に就くのだろうか。
「元々役者を目指していました。現在へ続く転機は、25歳のころです。舞台の制作を担当する会社を立ち上げたのです。『制作』とは、舞台の事務方全般を担う人のことで、1990年前後には、制作専門のスタッフはまだ珍しかったので、いろんなところから声がかかりました。でも立ち上げた当時は、それだけでは、食べていけませんでしたので、様々な仕事を掛け持ちしました。
一番初めに、2.5次元ミュージカルに携わったのは、1991年の舞台『聖闘士星矢』です」
それをきっかけに様々な 2.5次元の作品を手掛けた松田さん。仕事を通じ、あることに気がついたという。
「ある遊園地で、象がサッカーをする催しがありました。さらに、その象を操っていた人たちは、人気キャラの着ぐるみを着ていました。孫悟空や鬼太郎などです。
象がサッカーをしつつも、キャラクターの持ち味で、試合をしてもらいました。
子どもから見ると、象がサッカーをしているだけでも面白い。けれども、自分の知っているキャラ同士の対決も見られるともっと面白いですよね。
ただの象がサッカーをしても面白さは50%。キャラが演じているから親しみやすく楽しめるのだと、気がついてきました。キャラクターが演じることで面白さが倍増するんだと」
その後、『赤ずきんチャチャ』『サクラ大戦』など、多くの2.5次元ミュージカルを手がける。
演劇プロデューサーの仕事とは、ひと言でいうと、設計図を引く人だという。
「どの作品を、どのスタッフで、どの劇場で、いつ上演するのか。みんなが向かう先をつくるのが仕事だと思います。
プロデューサーは、技術的には何もできません。音楽を作れたり、照明を操ったりできません。でも、好きなクリエーターや自分がいいと思える人を集めて興業できるのが魅力です。
もちろん公演が失敗したらリスクを負いますけど」
■好きを仕事にするには?
アニメが好きで、舞台も好きな人には、演劇プロデューサーとは、うらやましい限りだ。好きなことを仕事にするにはどうしたらいいのだろうか。最後にアドバイスをもらった。
「好きなものがある人は、“好き”を突き詰めてみてはどうでしょうか。“好き”には、ものすごいパワーが秘められています。その力を使わない手はありません。
でも、アニメが好きだからといって、選択肢はアニメーター・声優だけでしょうか。変化球でもいいと思うんです。例えばウェブの制作会社に入ると、好きなキャラクターを使ってデザイン出来るかもしれません。
自分の興味を模索しつつ、粘ってみてはどうでしょうか。興味のないものにやり甲斐を見つけることは大変だと思います。少しでもチャンスのあるところを目指してみることをお勧めします」
今までなかったものを、2.5次元ミュージカルとして確立した、松田氏。ヒットにたどり着くまでには、苦労の連続だった。
だが年々集客が上がっているように、今後もますます舞台化する作品が増えるにちがいない。一度幕が開くと夢の世界へ連れて行ってくれるミュージカルの世界。まだ見ていない人は、一度足を運ばれることをお勧めする。<完>
■ 2.5次元ミュージカル協会では「2.5フレンズ」も用意
入会制限のない「フレンド会員」は、2.5次元ミュージカル情報などをメルマガなどで知ることができる。すでに募集を開始しているのでアクセスしてみよう。
http://j25musical.jp
©許斐 剛/集英社・NAS・新テニスの王子様プロジェクト ©許斐 剛/集英社・テニミュ製作委員会 (C)武内直子・PNP/ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」製作委員会2014
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