福島第1原子力発電所のトレンチ(地下坑道)から放射性物質の混じった高濃度の汚染水を抜き取る作業が難航している問題で、東京電力は19日、原子力規制委員会の検討会で追加策を示した。抜き取りの前提として建屋とトレンチの境目に「氷の壁」を作る予定だったが、約1割が凍っていないことが判明。9月にもセメントや粘土などの止水材を充填する方針。
トレンチは海に近く、高濃度汚染水が海洋へ流出するリスクは大きいことから、規制委は早期の対策を求めている。しかし、検討会では止水材投入の効果を疑問視する声があり、結論は持ち越しとなった。
福島第1では2、3号機の建屋とつながるトレンチに合計1万1千トンの高濃度汚染水がある。東電は建屋とトレンチの境目にセメントなどを詰めた袋を並べ、さらに凍結管を差し込んで隙間の水を凍らせて「氷の壁」を築く作業を進めてきた。壁で建屋と遮断したうえでトレンチから汚染水を抜き取る狙いだった。
4月に2号機のトレンチで始めた作業は難航している。8月中旬までに「氷の壁」を完成させる計画だったが、東電によると現状で凍結できたのは面積比で全体の92%にとどまっている。7月末から合計400トンを超す氷や5トンのドライアイスを投入したものの、汚染水の流れが集中するトレンチ上部などに凍らない部分が残っている。
19日の検討会で東電は、氷の投入を継続する一方、追加対策に踏み切る考えを示した。9月以降、トレンチの外側にも凍結管を差し込むほか、汚染水の流れを遮るためセメント袋を増やすことなどを検討する。凍らない部分には止水材を充填する方針で、9月末までに凍結・止水を終える考え。
19日の検討会では「凍結の有効性に疑念がある」との指摘があった。凍結以外の代替手段の検討を求める声もあがった。止水材の投入については改めて妥当性を検証することになった。
トレンチは建屋周辺の土壌を凍らせる「凍土壁」とも交差しており、汚染水の抜き取りがこれ以上遅れると凍土壁の工事にも影響が及ぶ可能性がある。
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