札幌圏
札幌市アイヌ民族施策「文化伝承、格差是正のため必要」 研究者指摘 貸付制度には問題点
(08/21 07:31)
札幌市議で自民党・市民会議所属の金子快之(やすゆき)氏(東区選出)が短文投稿サイト「ツイッター」に「アイヌ民族なんて、いまはもういない」と書き込んだほか、「支援制度はいらない」などと発言したことで、札幌市の「アイヌ民族施策」に関心が寄せられている。市は住宅資金貸付制度など主に14事業を実施。市や専門家は「いずれもアイヌ民族の生活や尊厳を守るために必要」としている。
市によると、札幌アイヌ協会に所属する市内のアイヌ民族は約2500人。だが、「名乗っていない人も多く、実態はさらに多い」とみる。市は1977年度に導入した住宅新築や改修時の資金貸付制度を皮切りに、アイヌ民族の小中学生を対象に教員が勉強を教える学習支援や、アイヌ民族の歴史や文化の紹介事業、伝統文化継承に必要な植物を栽培する事業などを実施。住宅資金など市アイヌ施策課が所管する8事業だけで約1億2800万円を支出している。
道が昨年度、道内のアイヌ民族約7千世帯1万6800人を対象に実施した生活実態調査では、計77%が「とても苦しい」「多少困る程度」と回答。調査に回答した人の生活保護受給率は4・5%で、アイヌ民族が住む道内66市町村の平均値と比べると1・4倍だった。こうした背景を基に、同課は「アイヌ民族の生活の安定、向上を図るために支援策は必要」と説明。アイヌ文化を守り伝え、市民に広く知ってもらう施策も併せて推進している。
市の施策について、北大アイヌ・先住民研究センターの丹菊逸治(たんぎくいつじ)准教授は「アイヌ民族は文化や福祉を抑圧されてきた歴史がある。経過を考えれば、国や市町村は、文化伝承の支援や格差是正のための生活支援を続ける必要がある」と話す。
一方で、住宅資金貸付制度では焦げ付きも出ている。2013年度末時点で、貸付金19億円の返済率は74・8%にとどまる。市は「本人に連絡を取って督促している」とする。丹菊准教授は、資金貸付制度については「市はこれまでの運用を検証し、制度を見直す必要がある」と指摘する。
金子氏は16日の北海道新聞の取材に対し、「どこからどこまでがアイヌ民族かという線引きがないのに、お金をもらいたいがためにアイヌ民族と言っている。札幌市の支援制度はいらない」と話していた。(片山由紀)
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