ロシアから支援されウクライナで戦っている親ロシア分離主義者は、なぜこんなに弱いのか? それが各国の軍事関係者の関心を引いています。

これに対するひとつの回答が、ニューヨーク・タイムズのアンドリュー・クレーマー記者の記事の中にあります。

それによると、いま親ロシア分離主義者から成る「ドネツク人民共和国」なる反政府軍では、相次いでリーダーシップの交代が起こっています。具体的にはロシア人が離れ、現地出身者に取って代わられているそうです。

これはクレーマー記者の考えでは、負け戦が濃厚になった東ウクライナで、和平交渉をするには、同じウクライナ人同士の方がやりやすいからだそうです。

具体的には、ロシア人であるアレクサンドル・ボロダイ首相が辞任しました。さらにイゴール・ストレルコフも国防相の地位を辞任しました。そして彼の補佐をやっていたフョードル・ベルツィンが昇格しました。

ベルツィンはドネツク生まれのSF作家です。彼はこれまでに18冊のSF・ミリタリー小説を書いたミリヲタなのですが、小説家では喰えないので、トイレ清掃用具のブローカーをして、生活の足しにしていたそうです。サバゲーの世界が、現実となり、すくなからず当惑しているようです。

その他、反政府軍の上層部に上った面々は、盲導犬学校のオーナー、サンタクロースのぬいぐるみを着てサンタの役を演じていたおじさん、ねずみ講を考案したペテン師など、香ばしい人たちばかりだそうです。

ここ数日で、反政府軍のトップがどんどん入れ替わったので、唯一残ったロシア人はウラジミール・アントユフェイエフだけです。

この関係で、親ロシア分離主義者の間で軍紀は乱れまくっています。毎晩、泥酔した戦闘員が交通事故を起こしまくり、事故った戦闘員が腹いせに民間人に対し銃をぶっ放すなどして現地の住民も苦々しい思いをしているそうです。

先述のベルツィン氏は「これは歴史の帰趨を決する天下分け目の戦いだ。ウクライナで起こっていることを見た海外の同志が国際旅団を結成し、ちょうどスペイン内戦の時のように馳せ参じることで戦いの流れを変えて欲しい」と語っています。

なるほど、そう言われて見ればスペイン内戦に馳せ参じたアーネスト・ヘミングウェイ、マーサ・ゲルホーン、ジョージ・オーウェル、ロバート・キャパ、ゲルダ・タローなどの面々も、必ずしも崇高なるイデオロギーでそうしたのではなく、功名心や野次馬根性、痛い中2病的な勘違いなどに突き動かされていた面は無いとは言えないかもしれません。

「これは驚くべきおとぎ話だ。毎日、一冊の本のネタとして余りある出来事が起こっている。だから早く戦争が終わって欲しい。そしたらこのリアルでの戦争体験を基に急いで本を書きたい」

親ロシア分離主義者の総司令官であるベルツィン氏が、こういうノリですから、プーチンが頭を抱えるのも無理はないですね。