新制度に変わった公益法人で不祥事が続いている。

 全日本テコンドー協会は7月、政府の第三者機関「公益認定等委員会」の事務局から認定を取り消されて一般法人になった。総会運営や不明朗な会計処理を巡り、認定委から2度、勧告を受けたあげく、自ら返上を申し出ての異例の事態である。

 認定取り消しにこそ至っていないが、勧告は他にもある。全日本柔道連盟(選手への暴力や助成金の不正受給)、日本アイスホッケー連盟(役員選びを巡る紛糾)、日本プロゴルフ協会(役員が暴力団員と交際、金をもらう)といった具合だ。

 なぜスポーツ団体に目立つのか、徹底的に調べる必要があるが、スポーツ分野の問題だと片付けてはなるまい。都道府県の認定分を含めて9千を超える新公益法人の大半はきちんと活動しているとはいえ、制度への信頼を揺るがしかねない深刻な事態だと考えるべきだ。

 明治時代に始まった旧制度では、各省庁が裁量で公益法人の設立を許可し、行政との癒着や天下りなどの弊害を生んだ。それを断ち切り、第三者機関による公平な認定に衣替えした。

 NPO法人などとともに、新公益法人が民間の非営利団体として公的な活動を担う。官と民が互いに協力し、競い合いながら社会を支えていく。5年間の移行期間を経て昨年末に完全に切り替わった新制度には、そんな狙いが込められている。

 新公益法人になれば、法人税の納税や寄付金集めで優遇税制が適用される。間接的に公費で支えている形だけに、認定委がしっかり監督するのは当然だ。

 ただ、認定委が勧告や取り消しを乱発すれば、法人による「自治」を尊重する改革の趣旨を損ないかねない。公益法人側が自らを正せるかどうかが問われるゆえんだ。

 約1400の会員を持つ公益法人協会は、スポーツ系を含め会員以外の法人にも呼びかけて緊急セミナーを開いた。こうした活動を広げ、非営利法人にくわしい会計士や税理士を紹介しあうなど、公益法人全体で改善に努めてほしい。

 認定委と、その事務局の内閣府にも注文がある。権限に基づく監督に加え、公益法人の自発的な取り組みを促すよう、工夫してほしい。

 例えば、「問題あり」と見た法人にまず報告を求める際、法人名は伏せつつどんな問題が生じているかを公表し、他の法人が自らを点検する機会にできないか。法人との「対話」を通じた支援も、大切な視点である。