孤立の深まりはロシアに打撃をもたらすだけだ。プーチン大統領はすぐさまウクライナ政策を転換し、世界との協調関係を取り戻さなければならない。

 政府軍と親ロシア派武装勢力との間で衝突が続くウクライナ東部では、戦闘による死者が2千人を超えた。半数は、政府軍の攻勢で戦闘が激化した7月下旬以降の死者だ。

 298人の命を奪ったマレーシア機撃墜事件も発生から1カ月が過ぎたが、現場付近の激しい戦闘に原因調査を阻まれ、真相の究明は進んでいない。

 紛争激化の背景にロシアによる武装勢力への軍事的支援を見る米欧は、撃墜事件の後で厳しい制裁に踏み切った。

 しかし、ロシアの政策が変わる兆候は見えてこない。

 これ以上の犠牲の拡大を防ぎ、撃墜事件の調査を進めるため、国際社会はいまこそ一層の努力を傾けるべきだ。

 折からロシアとウクライナの首脳に欧州連合(EU)の代表らも加わった国際会議が26日に開かれる。それをぜひ、事態打開の第一歩としたい。

 ウクライナ東部は、ロシア語を話す住民が多いとはいえ、ソ連崩壊後もずっと深刻な民族紛争とは無縁だった。住民の分離独立志向や、ロシアへの編入願望もさほど強くなかった。

 武装勢力は旧ソ連圏の民族紛争にかかわったロシアの元工作機関関係者ら、外部の人員を中心に組織された性格が強い。その結果起きた紛争は、暮らしを荒廃させ、地域の産業を破壊した。住民の支持は確実に減り、劣勢にもつながっている。

 ロシアはこうした現状を正しく認識するべきだ。重要なのは米欧も納得できる形で武装勢力への軍事的支援を控え、紛争を収束へ向かわせることだ。

 ただでさえ減速傾向が強かったロシア経済は、新たな制裁によって、エネルギーや金融などの基幹産業を中心に深刻な影響を受け始めている。

 ソ連崩壊後にロシアは、グローバル化という世界経済の動向を受け入れた。世界と協調することで投資や技術を引き入れ、経済を成長させてきた。

 いまプーチン氏は、自給自足的なソ連型経済への回帰すら口にする。だが国際的な孤立は、先端技術をそなえた産業の育成など、資源依存から脱して経済を現代化させるというロシアの重要課題に真っ向から反する。国内から強い懸念が出ているのも当然だ。

 ロシア自身の将来のため、プーチン氏はウクライナ政策で譲歩を決断すべき時である。