伊藤博敏「ニュースの深層」
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光通信御曹司のタイ代理出産事件には
プライバシーより重い社会的責任がある

2014年08月21日(木) 伊藤 博敏
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タイの首都・バンコクで、24歳の日本人男性が、代理出産により16人の乳幼児の父親になっていたのは、タイ国家警察の家宅捜索によって発覚した事件である。

日本では、この男性が東証一部上場企業・光通信の創業者の長男・重田光時氏で、現段階でも時価総額約50億円の株を保有する資産家であることから、その人物像と、多くの子供を欲した理由を探る報道が続いている。

だが、タイ警察が、最初に人身売買や臓器売買を疑い、16人の子供の内4人がカンボジアなどに出国しているために、その安否を確認、光時氏には事情聴取とDNA鑑定を依頼していることを忘れてはならない。

光時氏は、タイ警察にとって重要参考人だ。だが、8月5日に事件が発覚したあと、7日にタイからマカオに出国。9日、香港から日本に帰国した光時氏は、タイ警察の要請に応じておらず、17日、タイの代理人弁護士を通じて、DNAのサンプルだけを提出した。

ネット情報伝播から生命倫理まで多様な問題に関わる事件

 今回の騒動がつきつけているのは、代理妻にリスクを負わせる代理出産の是非だけではない。ネット社会が抱える真偽が定かでない情報の流出と伝搬、マスコミが陥るプライバシーのカベと名誉毀損、今後、ますます進展する生殖医療技術がもたらす生命倫理など、様々な問題が含まれている。

タイでは、商業的な代理出産は認められていない。だが、代理出産を制限する法律も罰則もなく、医療協議会の取り決めがあるだけ。そこで、代理出産がビジネスとして展開されてきた。

光時氏の事件発覚の前、オーストラリア人夫妻が、代理出産した双子のうち、ダウン症の男児の引き取りを拒否、健康な女児のみ連れ帰ったことから、国民的な批判が高まり、野放しだった代理出産に見直しの気運が高まっていた。

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