【戦争と性犯罪】性犯罪に走った一部米兵… 第2次世界大戦フランスでの米軍 (2/2ページ)

2014.08.07

 なぜ、一部の米兵は性犯罪に走ったのか。

 ロバーツ教授の著書によると理由は複合的だ。当時の記録では「フランス人に対して優位に立つ」手段として、買春や性的暴行を認める兵士がいた。暴行は男性が持つ征服欲のゆがんだ形での具体化かもしれない。

 また、逮捕・訴追された兵に、軍で差別的な待遇を受けた黒人が多くいたという。抑圧された感情が弱者を前に爆発したこともあるのだろう。

 メディアの影響も指摘されている。米兵と女性が抱き合い軍用車両上でキスをする写真が、写真誌『ライフ』の表紙を飾った。当時の性道徳は厳しく、米国には検閲もあったが、戦意高揚のためか、この写真は掲載された。こうした報道が、女性は自分になびくという変な勘違いを米兵につくったのかもしれない。

 ロバーツ教授は研究の目的について、「歴史を書き換えたいわけではなく、フランス側から見た実態を明らかにすることで、空虚な英雄話にとどまらない人類の経験として、米兵の姿をとらえ直したい」と語った。

 「正義の軍」というイメージを、米軍は当時から現在まで強調している。だが、70年前には性をめぐる野蛮さも当然あった。そこから、どれほど進化しただろうか。

 狂気と野蛮に満ちた戦争に向き合う軍という組織は、さまざまな顔を持つ。現代日本の頼もしい同盟国である米国にも危うい面があることを、70年前のフランスでの出来事は教えてくれる。

 ■石井孝明(いしい・たかあき) ジャーナリスト。1971年、東京都生まれ。慶応大学経済学部卒。時事通信記者、経済誌記者を経て、フリーに。安全保障や戦史、エネルギー、環境問題の研究や取材・執筆活動を行う。アゴラ研究所運営のエネルギー情報サイト「GEPR」の編集を担当。著書に「京都議定書は実現できるのか」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞)など。

 

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