高齢者が増えれば、介護の担い手がさらに必要になる。団塊世代が75歳以上になる2025年に、介護職員を今より最大で約100万人増やす必要がある、と国は推計する。

 ところが、現場は人手不足が常態化している。介護職員は現在約150万人。6月の有効求人倍率(パートタイムを含む常用)は2倍を超えた。全産業平均(0・9)を大きく上回る。

 介護労働安定センターなどの調査によれば、人手不足の最大の理由は、賃金が低いこと。国の統計で、ホームヘルパーや施設の介護職の平均賃金は常勤でも月22万円弱。全産業平均より10万円以上低い。

 来年度の介護報酬改定に向けて、秋から議論が本格化する。事業者に業務の効率化などの自助努力を求めつつも、職員の待遇改善・報酬アップにつなげてほしい。

 厚生労働省の検討会は、人口が減っていくなかで、他の職種と「人の取り合い」になることをにらんで、どうしたら介護職が選ばれる仕事になるのか、議論をしている。

 これまでに、仕事の楽しさや奥深さを積極的に発信することや、介護職員の中でも国家資格である介護福祉士を中核として明確に位置づける、といった提案が出ている。

 確かに、こうした事柄は、もっと重視されていい。

 介護職員なら、高齢者と接しながら「今の薬は飲みにくそうだ」「床ずれができそうだ」といった日々の様子や変化に気づくことができるし、そうした高齢者の様子を医師や看護師に伝えて連携することができる。

 さらに、コミュニケーションが難しくなりがちな認知症の人への対応には、専門性が求められる。認知症の人が大声を出したり、落ち着かなかったりする場合、体調や以前の生活習慣から原因を割り出して、穏やかに過ごせるようにする、といった技術・ノウハウだ。

 身の回りの世話に一部手助けが必要な要支援者向けのサービスについて、来年度からはボランティアの人も担えるようになる。間口が広がるなら、地域に貢献したいと思っている人たちを巻き込む工夫が必要だろう。

 同時に、これまで「介護」でくくられてきたサービスひとつひとつに、どの程度の専門性を求めていくのか、仕分ける作業が必要だ。専門性に見合った報酬の体系を整えることができれば、介護職の中でステップアップする道も開けるはずだ。介護職は、生活を支える専門職だ。その充実が急がれる。