LINEで電子マネー購入詐欺多発 京都滋賀で被害200万円超
何者かがスマートフォンなどの無料通信アプリ「LINE(ライン)」の利用者のアカウントを乗っ取り、偽のメッセージを受け取った人たちが電子マネーをだまし取られる被害が、全国で相次いでいる。滋賀県や京都府内でも5月以降、連続発生し、両府県の被害総額は200万円を超えた。両府県の警察は詐欺と不正アクセス禁止法違反の疑いで捜査しているが、いまだ摘発例はなく、捜査は難航している。
「何してますか?手伝ってもらってもいいですか?」。7月30日、草津市の男子大学生(22)は、大学の友人の名前が表示されたラインのメッセージを受け取った。「どうしたの?」と返信すると、電子マネーのプリペイドカードを買い、カードの番号の写真を送ってほしいと頼まれた。「急用なんですが…」と訴える内容に、大学生は「困っている友人を助けたい」と思い、近くのコンビニで4万円分のカードを買った。
番号の写真を送信すると、さらに6万円分のカードの購入を依頼された。おかしいと感じ、すぐに友人に電話した。友人は「今、乗っ取られている」とパニックになっていた。友人の親や他の友人も被害に遭っていた。被害届を出した大学生は「バイトなどでためたお金を取った犯人は許せない」と憤り、「付き合いの長い友人だから信用してしまった」と悔しがった。
プリペイドカードは、カード自体がなくても番号が分かればインターネット上で金額分の買い物ができる。県警によると、被害に気付いた後、カードの購入者が番号を入力しても全額が使用されているという。
県警によると、6月下旬から今月19日までに同様の被害が県内で計19件あり、被害総額は94万1千円に上る。被害者は20~30代が大半という。京都でも、府警の調べでは5月下旬から7月末までに計30件、144万7千円の被害があった。
県警の説明では、ラインのアカウントを犯人に乗っ取られた利用者は、認証に必要なメールアドレスなどのIDとパスワードを、フェイスブックなど他の会員制交流サイトでも使用していたという。そうしたIDとパスワードを犯人が手に入れ、ラインにログインして利用者本人に成り済ましているとみているが、「犯人がどのように端末にログインし、乗っ取ったかをたどるのは難しく、時間がかかる」(県警)という。捜査関係者によると、海外のサーバーを経由し犯行に及ぶケースもあるという。
両府県警はパスワードを定期的に変えたり、他の端末からログインできないように設定するなどの対策のほか、「ラインでの電子マネー購入依頼は詐欺の可能性が高い。必ず本人に電話で確認して」と注意を呼び掛けている。ラインの運営会社も7月、IDとパスワードに加え、4桁の暗証番号がないとログインできないシステムを新たに導入し、利用を促している。
インターネットに詳しい森井昌克神戸大大学院教授(情報通信工学)は「ラインは本当に身近な人とのコミュニケーションに使うため、たとえお金の貸し借りの話でも疑われにくい」と指摘。「自分のアカウントで被害者を出してしまうと、相手が身近な人だけに信用の失墜も大きい。ネット上では自分のことは自分で守ることが前提になる」と話す。
<LINE(ライン)>スマートフォンやパソコンなどで利用する通信アプリケーションソフト(アプリ)。登録すれば、知り合い同士がインターネット回線を通じて無料でメッセージのやりとりや通話ができる。7月末時点で国内で5200万人、世界では230の国と地域で4億9000万人が利用している。
【 2014年08月19日 23時17分 】
