有名建物・建造物の撮影は著作権侵害?


有名建物・建造物の撮影は著作権侵害?著作権侵害の解決・契約・活用を研究する弁護士ブログ
「プロのための著作権研究所」所長(所員なし,募集中)
の弁護士・診断士の柿沼太一です。

まずは料理。

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・ エビチリ
・ 椎茸と卵の炒めもの
・ 焼きレンコンのクリームチーズ和え
・ ジャガイモとタコのバジル和え
・ アボガドとトマトのブルスケッタ
です。

エビチリって外で食べると結構高いですよね。家だと思う存分食べられて幸せになります。ちょっと汁気多めに作って,ご飯にかけて食べるとたまりません。

アボガドも手軽に料理できて大好きです。酸味(ビネガー,酢,梅干しなど)とあわせるととても美味しいし,変色しにくいのでオススメです。

さて,前回まで7回にわたって,著作権契約書に関する記事を連載してきましたが,一段落しましたので,今回は,「有名建物・建造物の撮影は著作権侵害?」について書きます。

問い:
番組やニュース制作に際して,著名な建物・建造物(たとえば,神戸で言えば神戸ポートタワーや,ルミナリエ)を撮影することがあります。もちろん建物等の中に入って撮影する際には許可を得て撮影するのですが,公道からそれらの建物・建造物を撮影したり,撮影した映像を使用する場合にも許可が必要なのでしょうか。

答え:
1 建物や建造物が,著作物か著作物でないかをまず検討する必要あり
まず,撮影対象となっている建物や建造物が著作物かどうかを検討する必要があります。
著作物でなければ,公道からの撮影は自由になるからです。

著作権法10条1項には,著作物の例示として
「四  絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五  建築の著作物」
が掲げられています。

このうち「五  建築の著作物」は,全ての建築物が該当するわけではなく,いわゆる建築芸術と言いえるような創作性を備えた場合に限られる,とされています。したがって,通常の建て売り住宅などはこれに該当しません。
したがって,有名な建物や建造物についても,全てが著作物に該当するわけでは無い,ということになります。

また,著作物であったとしても,歴史的建造物(たとえば金閣寺や銀閣寺)については,通常著作権の存続期間が満了しているので,著作物ではないと考えて良いでしょう。
このように,著作物でないものについては,当然撮影は自由になります。

では,著作物に該当する場合,撮影したり,撮影した映像を放映したりする際にいちいち著作権者の許可が必要なのでしょうか。

2 原則として利用は自由
結論から言うと,建物や屋外に恒常的に存在する建造物については,原則として自由に撮影したり放送したりすることが出来ます。

根拠は,著作権法46条という条文にあります。

(公開の美術の著作物等の利用)
第四十六条  美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
一  彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合
二  建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合
三  前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
四  専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合

ちょっと読みにくいですが

1 美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所(注:街路、公園その他一般公衆に開放されている屋外の場所のこと)に恒常的に設置されているもの
2 建築の著作物
については原則として自由に利用できるという条文です。

 したがって,たとえば神戸ポートタワー(これは,おそらく建築の著作物に該当します。著作権は期間満了により切れているかもしれませんが,そこはちょっと置いておいて。)について屋外において撮影したり,撮影した写真を利用したりすることは原則として自由です。

神戸ルミナリエについてはどうでしょうか。

この場合に問題になるのは46条1項の「美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの」のうちの「恒常的に設置されているもの」の要件です。

この要件は,常時継続して公衆の観覧に供するような状態に置くことをいう,とされており,時期によって作品の付け替えが出来るような場合は該当しないとされています。

神戸ルミナリエは期間限定ですし,毎年内容が変わりますので,この「恒常的に設置されているもの」の要件を満たすのは難しいと思われます。

したがって,神戸ルミナリエについては著作権法46条の適用がないので自由利用が出来ない,ということになります。

先ほど,神戸ポートタワーについては原則として自由に利用できる,と書きましたが,では例外的に利用できない場合はどんな場合か。
これは先ほど示した著作権法46条の1号から4号に規定する場合です。

神戸ポートタワーに即して言うと,たとえば

  • 実物大の大阪ポートタワーを制作して道頓堀に設置する場合(2号)
  • 50分の1のミニポートタワーを制作して,公園に設置する場合(3号)
  • 神戸ポートタワーが写った絵はがき,カレンダー,ポスター,素材集などを制作・販売する場合(4号)

はアウト,ということになります。

大阪ポートタワーはおそらく誰も作ろうと思わないでしょうから,実際に問題になるのは,絵はがきやカレンダー,ポスター,素材集の制作・販売でしょうね。

以上です。

今日はここまで。

<今日のまとめ>

  • 美術作品や建築物であっても著作物で無かったり,著作権存続期間が満了しているものは撮影・利用自由
  • 著作物であっても,建築物や屋外に恒常的に設置されている美術作品は原則として撮影・利用自由
  • ただし,当該作品や建築物の複製物(絵はがきやカレンダーなど)の販売を目的とする場合は撮影・利用不可。

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