私が昔大学生だった頃、一冊の文庫本に強い影響を受けた。
それは城山三郎の「プロフェッショナルの条件」という本である。
副題に「アメリカ対談紀行」とあるように当時のアメリカの様々な分野で活躍していた人達との対談集である。
その中に経済学者のポール・サミュエルソンとの対談が載っていた。
ポール・サミュエルソンといえば「経済学」という教科書が異例のベストセラーになり、後に第2回目のノーベル経済学賞を受賞した経済学界のスーパースターである。
このサミュエルソン教授が城山三郎に趣味は何か?と聞かれて、「仕事でしょうか。仕事にしては稼ぎすぎていますけどね」と答えるくだりがあり、私はこの一言にずっと影響されてきたのである。
要するに天職について大成功した人の生き方を垣間見て、これこそ理想の生き方だと思ったのである。
しかしもちろん自分が学者になろうと思った事など全く無く、サミュエルソン教授が経済学を天職に選んだのに対して、私は資格の取得が天職につながると信じたのであった。
大学生の頃の私は数ある資格の中で司法試験や会計系の資格は初めから自分とは無縁の世界と思っており、その他の資格の中から、大学の授業の勉強すら全くしていなかったのに司法書士なら手が届きそうだと何故か不思議な自信を持ち、将来は司法書士になってバリバリ働きたいと夢見ていた。
司法書士が自分の天職だと勝手に思い込んでいたのである。
そして何度も書いたが社会人として働くうちに、難関の司法書士など自分にはとても無理だと気が付き、社会保険労務士に軌道修正したのである。
そして最終的には宅建、行政書士、社会保険労務士、中小企業診断士の四つの資格を取れば、自分の勉強コンプレックスも解消され、十分独立できるだろうと考えたのだ。
しかし結局社労士も断念して、取れた資格は宅建と行政書士だけになり、当初の予定は大分狂ってしまった。
だが複数資格の取得者も大抵一つの資格に注力している現状を知り、私の場合は行政書士専業で開業する事になった。
行政書士の資格も7年かけて5回目の受験でようやく基準点ギリギリで合格した、私にとって大事な資格なのである。
数ある士業の中でも最も簡単で最も食えないと言われるこの資格を私は何とか自分の天職にしたいと思う。