おサイフケータイのように専用端末に携帯電話を近づけなくても、モバイル決済のようにクレジットカードを取り出して処理してもらわなくても、クレジットカードで簡単に支払いが出来る…。
そんな夢のようなサービスがiPhone6発売とともに広がりを見せそうなので、先取りして記事しておきますね。これを読んだらみなさんも、『確かにおサイフケータイ、不要になっちゃうかも…』と思うこと、間違いなしですよ。
PayPal Beaconを徹底まとめ:
今回紹介するのはiPhoneのiBeacon(アイビーコン)機能を利用した、PayPal Beacon(ペイパルビーコン)という決済手段についてです。
もはや横文字ばかりで全く意味がわらない…という方も多いと思うので、まずはiBeacon機能から紹介させてもらいますね。
iBeaconはBluetooth通信を利用した機能:
iBeaconとはどのような機能なのか?
iBeaconを解説している専門サイトがありましたが、予備知識がない方にはちんぷんかんぷんな内容かもしれません(汗)。わからない方はそのまま引用部分を読み飛ばしてください。
iBeaconsとは、iPhoneのiOS7に標準搭載されたことで、いま注目を集めているBluetooth Low Energy(BLE)を使った新技術です。
従来オンラインの告知から実際に店舗に誘導するO2O施策を行う場合、NFCが使われることが多くありました。しかし、NFCはiPhoneが対応していないためO2O全体が伸びやんでいる状況となっています。
しかし、iBeaconsはiPhoneが標準対応しBLEという汎用技術を使っています。そして、iBeaconはApple社の商標ですがAndroid端末にも同様の技術を適用することが可能であり、スマートフォン全体で使う事ができると期待されているのです。
このような経緯からiBeaconsは、O2Oの切り札として注目を集めています。
ざっくりiBeaconを説明:
ざっくりと説明するとiBeaconとは、みなさんが持っているiPhone(スマートフォン)とBeacon端末の間で通信しますよ~という機能のこと。Beacon端末が発しているBLE(Bluetooth Low Energy)をiPhoneが受信することで作動します。
まぁこの解説でもちょっとイメージしにくいと思うので、更にイメージしやすくいうとiBeaconは『携帯電話と電波の関係と一緒』なんですよ。
電波がある場所では携帯が使えて、電波がない場所では使えないのはみなさんもご存知の通り。iBeaconではこれを、ごくごく狭い範囲(小売店の店舗内や、売り場の一角など)で行うことで、あなたのiPhoneと通信するのですね。無線LANなどともイメージ的には近いです。
通常のiBeaconの使い方:
photo by jnxyz (この画像のように、端末に近づけると反応します)
こういったiBeaconの『近づくと受信する』という機能を利用した通常の使い方については、下記のようなものがあります。
- 特定の商品に近づいた時に、その商品の説明をiPhoneに表示する。
- 特定の店舗内に入った時に、そのお店の現在のセール情報を表示する。
- お店の近くを通行している人に、入店でポイントが得られると通知する。
- お店側が来店者情報を把握することが出来る(承諾している場合)。入店しただけで『19時に予約された○○さんですね、いらっしゃいませ!』と案内される。
などなど、使い方はさまざま。とにかくBeacon端末が発するBLEの範囲に入った瞬間に、店舗側、顧客側ともに、情報を送受信することが出来るようになるのですね(商品Aに近づいた時には商品Aの説明、商品Bに近づいた時には商品Bの説明を表示させることが出来る)。
もっとiBeacon機能を知りたい方に:
補足としてiBeaconの詳しい記事を並べておきます。
- Windows Insider用語解説:iPhone/iPadで使える「iBeacon」とは? - @IT
- 企画とエンジニアが知っておかないといけない「iBeacon」の話 #iBeacon #yahoo #iOS7|CodeIQ MAGAZINE
- 第660回:iBeaconとは - ケータイ Watch
これを支払いに適用したのがPayPal Beacon:
前置きが非常に長くなりましたが、とりあえずiBeaconは特定端末に近づいた場合のみ作動する機能であることはご理解いただけたかと思います。
この『近づいたら動く』という機能を使った支払い手段が、今回、紹介するPayPal Beacon(ペイパルビーコン)なんです。まずはPayPal Beacon側が作った下記動画を見てみてください。
PayPal Beacon: Hands-Free Payments - YouTube
尚、スマーフォンなどで動画が見られない方は、こちらの動画解説サイトをご覧ください。
動画の中では携帯1つで買い物をしている:
動画を見てもらえればもうPayPal Beaconとはどんなサービスなのか一目瞭然。動画の中の女性は、iPhone1つで買い物を済ませていることがわかります(おサイフケータイのように、特定端末にタッチさせる必要性もありません)。
また、PayPal Beaconを利用すれば、店舗に近づいた瞬間に『あっ、さっきあの商品を購入予約してくれた方だ!』とお店側に気付いてもらうことが出来るため、お店の外で商品を受け取ることだって出来ます。
これも先ほど説明したiBeacon用端末が、あなたの携帯電話が店舗に近づいてきたことを認識するからこそ、可能になるサービスなのですね*1。
PayPalアプリをインストールしたAndroidあるいはiOS端末を持つユーザーがBeaconが設置されたショップに近づくと、スマートフォンが振動してそのショップがBeaconに対応することを通知し、ユーザーがショップからのアクセスを承認(チェックイン)すると、その後はスマートフォンを取り出さずに、買うものをレジに持っていくだけでハンズフリーで決済できる。
ショップ側では、ユーザーが承認した時点でPayPalのPOSシステムにユーザーの顔写真付きのデータが表示される。
iBeaconを利用すれば支払いがもっと楽になる:
このようにPayPal Beaconの可能性は無限大*2。
例えばJRや私鉄が自動改札機にBeacon端末を設置すれば、利用者は改札を通過する度にカード決済することが可能になります。通過する度にBLEの近接通信で通行を認識してもらえるために、ポケットからスマホやSuicaを取り出す必要性もありません。
コンビニでの支払いもハンズフリー:
他にも行きつけのコンビニがPayPal Beacon決済に対応してもらえる場合には、レジでの支払い作業自体が不要になります(お店側には事前に登録したあなたの顔社員が表示される)。現金を取り出す必要性も、クレジットカードを出すことも、そして電子マネーをレジに押し当てる必要性もありません*3。
いやはや、まさにハンズフリー決済。BLE通信による決済には夢があるように思います。
PayPal Beaconの関連記事:
他、PayPal Beacon関連の記事をまとめておきます。
- PayPal のハンズフリー決済 『PayPal Beacon』とは!?
- 2014年電子決済業界の10大予測で「NFCの死」が1位に選ばれる - iPhone Mania
- ペイパル、ハンズフリー決済を実現する「PayPal Beacon」デバイスを披露 - CNET Japan
iPhone6にNFCが搭載されるかどうか:
photo by Martin uit Utrecht (iPhone6発表前の想像画像)
2014年9月に発表予定のiPhone6に、仮におサイフケータイ機能(NFC)が搭載されないのであれば、PayPal BeaconなどのBLE決済が一気に普及していく可能性も高いですよね。
- iPhoneにNFC搭載…まだまだおサイフケータイの時代
- iPhoneにNFC非搭載…これからはBLE決済の時代に
Apple側もiBeaconを普及させたがっている背景もあるので、敢えてNFCを搭載しないiPhoneを発売するかもしれません。このあたりはAppleのさじ加減…といったところなのでしょう。
以上、おサイフケータイすら不要になる、PayPal Beaconを徹底まとめ…という話題でした。
文末リンク:
- 第511回:Bluetooth Low Energy とは - ケータイ Watch
- 【連載】Bluetooth LE (1) Bluetooth Low Energy の基礎 (フェンリル | デベロッパーズブログ)
- BLEとは 【 Bluetooth Low Energy 】 【 Bluetooth LE 】 - 意味/解説/説明/定義 : IT用語辞典
*1:実は日本でもPayPal Beaconと同様のサービスが今年、開始されていたのですが、あえなくサービス停止になってしまいました。時代よりもちょっとだけリリースが早かったのかもしれません(顔写真で本人照合して買い物できるKAOTAS(カオタス)が、8月18日付で終了へ!)。
*2:正確にはPayPal Beaconだけが実現できるサービスではないので、iBeaconの可能性が無限大…ですね。
*3:まぁ実際に導入された場合には、トラブルを避けるために『この金額で間違いありませんか?』といったタッチパネル表示をタッチするなどの手間は発生すると思います。