イラク:米軍が初のダム空爆 イスラム国が占拠

毎日新聞 2014年08月17日 20時40分

 【ワシントン及川正也】米軍は16日、イラク北部のモスル・ダムを空爆した。ダムを占拠しているイスラム過激派組織「イスラム国」を攻撃し、クルド人治安部隊による奪還作戦を側面支援するのが狙い。また、イラク北部のアルビル近郊でも空爆を実施。いずれも戦闘機や無人機での空爆で装甲車などを破壊し、「成功した」と発表した。空爆は9日連続だが、ダムへの空爆は初めてで、イラクでの軍事介入の拡大は論議を呼びそうだ。

 モスル・ダムは、北部の主要都市モスルからチグリス川沿いに北へ約50キロ離れた場所にある。ダムがある湖は北部一帯の給水源になっている。イスラム国はダムや油田などライフラインを襲撃しており、同ダムは7日に占拠された。

 オバマ米大統領は7日にイラク空爆を承認したが、政府高官は同日、「ダムの決壊による大水は米大使館を危険にさらす恐れがある」として、爆撃対象になる可能性を示唆していた。米大使館はモスル・ダムから南へ約360キロ離れた首都バグダッドのチグリス川沿いにある。

 オバマ大統領が承認した空爆は(1)クルド人自治区の中心都市アルビルやバグダッドの米政府職員や軍人らの保護(2)シンジャル山のクルド系少数派ヤジディー教徒を包囲したイスラム国の排除−−の二つが目的。

 今回のダム空爆の根拠は、バグダッドの米国民を保護するための「自衛権」行使とみられるが、標的は地理的に拡散しているのが実態。専門家からは「限定的」とされる攻撃が長期化・拡大した場合、「議会の承認が必要」との指摘も出ている。

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