コラム:世界的金利低下が示唆する円高シフト=佐々木融氏
佐々木融 JPモルガン・チェース銀行 債券為替調査部長
[東京 18日] - 先週末15日の欧米市場は長期金利低下に拍車がかかり、ドイツ、フランス、スペインの10年国債利回りは順に0.95%台、1.34%台、2.39%台まで低下し、いずれも史上最低を記録した。
年初からはそれぞれ97ベーシスポイント(bp)、121bp、171bpも低下している。ちなみに、スペイン国債の格付けはトリプルBだが、トリプルAの米国債(ただし、S&PはダブルA)利回りとの差は5bp程度しかない。
ユーロ圏以外でも、スウェーデン、英国、カナダ、ニュージーランド、米国など多くの国で10年国債利回りは約1―2年ぶりの水準まで低下している。こちらは年初からの低下幅は約60bpから100bp程度となっている。
日本でもむろん長期金利は低下し、18日には10年国債利回りは2013年4月以来の0.5%割れとなった。しかし、年初来からの低下幅はわずか24bpである。日本は長期金利の水準がもともと低いから低下余地が小さい。
つまり、世界的に長期金利が低下すると、名目長期金利の低下余地が限定的となっている日本と他国との名目金利差は縮小する。したがって、名目金利差の観点から非常に単純にみれば、世界の長期金利低下は円高要因となりやすい。
<名目長期金利低下の深層>
もう少し掘り下げた分析をしてみよう。そもそも、なぜ名目長期金利は世界で低下傾向にあるのだろうか。 続く...