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【社会】

戦後69年「戦前のにおい」 体験者、次世代へ警告

2014年8月16日 07時01分

千鳥ケ淵戦没者墓苑で献花し、手を合わせる女の子=15日、東京都千代田区で(伊藤遼撮影)

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 憲法九条の解釈変更で、「戦後」を支えた平和主義が揺らぐ中、十五日、六十九回目の終戦記念日を迎えた。苛酷な戦争をくぐり抜けた体験者らは社会の空気に危うさも感じている。「戦死者を弔う方法は平和しかない」。次世代に向け、非戦を訴える声は今夏ひときわ、切実に響く。

 セミの声が鳴り響く中、多くの遺族が訪れた千鳥ケ淵戦没者墓苑(東京都千代田区)。伯父が海外で戦死した板橋区の前原隆重さん(84)は小学校に入学したころ、出征兵士を駅の広場で見送ったことを思い出す。「きっぱりと敬礼をして行く人もいたが、泣き崩れる者もいた。家族や周りの人たちも肩を震わせて泣いていた」

 集団的自衛権行使容認などの動きに「戦後十年目に『もはや戦後ではない』と言われたが、今、私ははっきりと戦前のにおいを感じる。第一歩だ。言うならば昭和十年か十五年ぐらいだ」と警鐘を鳴らす。

 終戦後の食糧難の中、手に入れた米を警官に没収されないよう、かばんを抱えて歩き「犯罪者の気持ち」だった。「食うに困った経験がないから関心を持てないかもしれないが、再びそんな時代にならないよう、二度と戦争を起こさないことが大事」と若い人に伝えたい。「こんな話をできる人も、あと五年、十年でいなくなってしまうんじゃないか」

 神奈川県大和市の金子真さん(76)は戦中、中国・上海の小学校に入学した。「日本国内ほどではなかったと思うが、富国強兵、八紘一宇(はっこういちう)と教わった」という。

 軍備を強くし、アジアを統一するという目標を、子どものころから刷り込まれた。

 特定秘密保護法などに「戦前に戻りかけている」ような不安を感じている。「国の体制や思想を統制しようという意図があるのではないか、という印象が拭えない」

     ◇

 日本武道館(千代田区)での全国戦没者追悼式に出席した東京都西東京市の自営業漆原貢一さん(78)も、解釈改憲を推し進める動きに「このままでは戦争に引きずられてしまう。国民が巻き添えになる」と危機感を持つ。一九四五年三月の東京大空襲で父母と幼い弟妹三人を亡くした。新潟に疎開していた漆原さんは九歳にして独りぼっちになり、声も涙も出なかった。

 福島県会津若松市の来栖会津子(えつこ)さん(70)は、生まれる前に父が出征しフィリピンで戦死。名前には「会津のような平和な世の中に生きられる子どもになるよう」という父の願いが込められている。今の政治の動きは「戦没者たちの声を聞いているようで、聞いていない」と感じる。「弔う方法は、平和であることしかないんです」

     ◇

 東京都台東区の浅草寺。夕闇の本堂に戦没者らを慰霊する灯籠の炎が揺らいだ。同区の吉田郁子さん(77)は盛岡市出身。女学生の姉二人は、過酷な軍需工場勤務で病死。家業の酒店が焼け、心労がたたった母も終戦翌年に亡くなった。「若者は危機感を持って、戦争をなくそうと声を上げてほしい」

(東京新聞)

 

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