汝びびることなかれ
| 論文作法―調査・研究・執筆の技術と手順 (教養諸学シリーズ) (1991/02) ウンベルト エーコ 商品詳細を見る |
言わずと知れたウンベルト・エーコ『論文作法』である。大学の師匠がゼミで薦めていたので購入して持っていた。引越の時に一度手放してしまったが、やはりこれは持っていなければと思い直し最近また買った。読むたびに背中を押してもらう場所は違うが、今回はここだった。
(第V章6節 学問上の矜恃 221-222頁)論文であれ(また時には)印刷された書物であれ、著者がひっきりなしに、乞われもしない弁解を繰り返しているものほど、じれったく感じさせるものはない。〔…〕
悠然と、「こう思う」とか「こう考えられる」と言いたまえ。君が語っているときには、君がエキスパートなのだ。もしも君が偽のエキスパートだということが見つかれば、損をするのは君だが、しかし君には躊躇している権利はない。君はその特定テーマについて共同体の名において語る人類の役人なのだ。ものをいう前には謙遜かつ慎重でいたまえ、だがいったんしゃべり出したときには、高慢かつ尊大でいたまえ。〔…〕
またたとえ、そのテーマについて語られたすべてのことを要約しただけで、何ら斬新なことを付け加えていない、編纂的な論文を選んだとしても、君は他の権威者たちによって語られたことについては一権威者なのだ。そのテーマについて語られたすべてのことを、君以上によく知っている者は皆無のはずである。
エーコのこの本は、たどりつくべき高みを示すだけでなく、もがき苦しむ者が手を伸ばすべき藁を同時に差し出してくれているのがすばらしい。苦しむ者に寄り添うとはこういうことである。
なお、指南書然とした形式ではなく、一学者のノンフィクションコメディ的な形式で、論文を書く行為が学者の日常の中にどのように組み込まれているかを知りたければベッカー先生の日常をのぞかせてもらうのがよい。
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学術出版の世界はジャマーノ編集長が教えてくれる。
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