日本の長期金利の低下が続いている。18日には指標となる新発10年物国債の利回りが終値でも1年4カ月ぶりに0.5%を下回った。欧米の長期金利低下が一因だが、日銀による大量の国債購入がややいびつな形で国内の金利低下を引き起こしている。
15日に一時0.5%を切った長期金利は週明け18日も低下傾向だった。午前10時ごろに0.495%をつけた後はほぼ横ばいで推移。長期国債先物も値動きは乏しく売買高は今年最低だった。
金利低下により企業向け融資や住宅ローンの金利が一段と低下する公算が大きい。経済活動を刺激する効果を見込めるが、長期金利が0.5%を下回ったのは金融不安が強かった2003年6月や、昨春の異次元緩和導入直後などに限られる。
ここに来て金利が低下した主因は国内の需給の変化だ。日銀が大量に国債を買い入れている影響で、「市場に流通する国債は年20兆円強のペースで減っている」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純氏)。
春先までは大手銀行の国債売却と日銀の買い入れが釣り合ってきたが、徐々に銀行の売りが減った。政府が国債を発行するとすぐに日銀が吸収する構図で、7月末時点では新発10年債の半分強が日銀の手元に移っている。
国債に代わる投資先の発掘が進まないことも影響している。企業は潤沢な手元資金を抱えており、融資や社債発行は盛り上がりを欠く。海外金利も低下傾向にあるため「外債投資は一服している」(JPモルガン証券の山脇貴史氏)という。
国債の品不足感は一段と強まりそうだ。9月には過去に発行した国債が満期を迎え、金融機関に10兆円強のお金が戻ってくる。金融機関は投資妙味の薄い金利水準でも、ある程度資金を国債に振り向けなくてはならない状況だ。日銀は2%の物価目標を達成するまでいまの買い入れを続ける方針で、当面金利は低下が続くとの見方が多い。
長期金利は理論上は(1)実質経済成長率(2)物価上昇率(3)財政悪化への警戒に対する上乗せ分――の3要素で決まる。平均的な見通しに沿えば(1)と(2)だけで1%台半ばから後半が妥当な水準となる。主要国で突出する日本の財政悪化は金利に全く反映されていない計算だ。
日銀のシナリオ通りに物価が上昇すれば、いずれは国債の購入をやめることになる。東短リサーチの加藤出氏は「金利の急上昇を招かずに金融緩和の出口を乗り切るのは日増しに難しくなっている」と言う。金利上昇へのマグマが静かにたまっている面もありそうだ。
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