(2014年8月18日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
南シナ海に中国が設置した石油掘削装置は撤収されたが、緊張は和らいでいない〔AFPBB News〕
リャン・ヤパイさんは南シナ海の海図を取り出すと、ベトナム、中国両国が領有権を主張する資源豊富な島嶼群を指差してみせる。
海南島の三亜港に停泊している中国漁船の船長のリャンさんのような漁師は、パラセル諸島(中国名:西沙諸島)周辺の海域で漁に精を出している。
中国の施政下にあるパラセル諸島はベトナムも領有権を主張しており、中国が今年5月に石油・天然ガス探査のために浮遊式掘削装置(リグ)を送り込んだ後、両国間の激しい対立の焦点となった。
中国石油天然気集団公司(CNPC)が石油・天然ガス埋蔵の兆候を見つけたと発表したのを受け、中国政府は先月、リグを撤収した。
資源埋蔵の兆候発見で漁師にさらなる圧力
資源発見の発表は、南シナ海の火種の1つの最前線に身を置く中越両国の漁師たちにさらなるプレッシャーを加えた。
中国の海での長年にわたる乱獲により、リャンさんのような漁師たちは中国が支配している海域の周辺へ赴くことを余儀なくされた。
英国のシンクタンク、王立防衛安全保障問題研究所(RUSI)によると、中国の漁師は現在、150万平方マイルの海域――南シナ海の半分以上――の領有権を守っているように見られたがっている、次第に強硬になり予算も手厚くなった中国海軍の行動によって勇気付けられることが多いという。
「我々は何度となく(海の国境を)越えていますよ。こっち側では十分な漁が獲れませんからね」。毛沢東の肖像画を掲げた漁船の操舵室に立ち、リャンさんはこう言う。
カニとビールの朝食を取りながら、ベテラン漁師のリャンさんは、最近まではベトナムの沿岸警備隊がよく中国漁船を拿捕し、銃を突きつけて漁獲物の引き渡しを強制することがままあったと語る。
リャンさんと仲間の乗組員たちによると、中国政府が自国の軍のような沿岸警備隊の強化に資金を注ぎ込むにつれ、ベトナム当局に臨検される中国漁船が減っているという。