「STARTING OVER」(Moving Factory)

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「STARTING OVER」(Moving Factory)

 17〜22歳が所属するアイドルグループ・青山聖ハチャメチャハイスクール(以下、メチャハイ)の運営が、メンバーと個人的な“つながり”を持ったファンの実名を公表し、騒動となっている。

 メチャハイは、2年前にデビュー。3月にリリースされたシングル「STARTING OVER」(Moving Factory)は、インディーズながらオリコン週間ランキングで7位を獲得。また、所属事務所・Moving Factoryは、渡辺プロダクショングループの渡辺音楽出版との業務提携も決定しており、メジャーデビュー間近ともいわれている。

 しかし、4月にはメンバーの結城美帆が“体調不良の深刻化”を理由に脱退。美浦聖奈も、先月から“体調不良”を理由にライブを休んでいた。

 そんな中、17日に開催されたデビュー2周年記念ライブにおいて、結城の脱退理由を、男性ファンと個人的なつながりを持っていたことによる解雇であると訂正。さらに、美浦も同様の理由で、脱退が発表された。

 さらに総合プロデューサーの赤虎氏は、メンバーとつながりを持った2名の男性ファンの実名を公表。ネット上では、彼らのTwitterやブログなどが特定され、写真が拡散される騒ぎとなった。

 また同日、美浦とつながったとみられる男性が、「拝啓MovingFactory様」というタイトルでブログを更新。「一般な市民とし自由に恋愛をしただけ」と主張したほか、Moving Factory側から弁護士を通じて823万2,400円が請求されていることや、「やくざを使い殺す」と恫喝されたことを暴露した(ブログはこちら)。

 一方、結城とつながったとみられる男性も、YouTube上に謝罪会見を模した動画を投稿。動画の意図は不明だが、運営を挑発するような内容となっている。


 
 類似した騒動といえば、東京・赤羽発のアイドルグループ・Nゼロの運営会社も先月、メンバーとファンが私的に連絡をとった場合、双方に損害賠償請求すると発表。アイドルファンの間で話題となった(関連記事)。

 しかし、そもそもアイドルの運営は、ファンに賠償請求が可能なものなのだろうか? アディーレ法律事務所の島田さくら弁護士に話をうかがった。


――運営側がファンに対し、「アイドルと個人的に連絡をとらない」ことを約束させることは可能か?

「ファンであることを理由に、アイドルと個人的に連絡をとらない約束を強制することはできません。たとえば、事務所のホームページに『アイドルと個人的に連絡をとった場合には、損害賠償を支払ってもらうルールを制定します』と一方的に記載しても、ファンは同意しておらず契約も成立していないので、契約違反を理由に損害賠償請求をすることはできません。

 ただし、ファンクラブの入会規約等にアイドルと個人的に連絡をとらないようにと記載してあり、それに同意してファンクラブに入会しているのであれば、契約違反ということで損害賠償を支払わなければなりません」

――今回のメチャハイのケースでは?

「ファンの男性と所属事務所の間で、アイドルとの関係についてなんの契約も結ばれていないのであれば、契約違反を理由に損害賠償請求をすることはできません。もっとも、ファンの男性がわざと(故意)、あるいはうっかり(過失)事務所の権利や利益を侵害し、損害を与えた場合には、不法行為に基づく損害賠償責任を負います」

――メチャハイ・美浦とつながったとされる男性のブログにある「823万2,400円の請求」が事実だと仮定し、支払いを拒否した場合、今後どのような論点で話し合われる可能性があるか?

「男性が支払いを拒否した場合には、『不法行為が成立するか』ということをメインに話し合いをすることになると思います。たとえば、男性が事務所に恨みを持っていて、事務所に損害を与えるためにアイドルと個人的に連絡をとって付き合い始め、関係を公表し、アイドルの人気を落とすとともに、事務所に損害を与えるような場合には、不法行為が成立するでしょう。しかし、事務所側でこういった事実を証拠によって証明しなければなりませんが、なかなか難しいと思います。

 また、男性がアイドルと個人的に連絡をとっていた、あるいは、誰にもバレずにこっそり付き合っていたというだけでは、事務所に損害が発生したとはいえないでしょう」


 今回の騒動については、真偽や詳細など不明点が多いものの、表面的にうかがう限り、ファンに損害賠償を求めることはなかなか難しそうだ。


【取材協力】
島田さくら 弁護士法人アディーレ法律事務所 所属弁護士(東京弁護士会所属)
自身の過去のオトコ運のなさからくる経験(元カレからのDVや、妊娠が発覚した翌日にカレから別れを告げられたこと)をもとに悩める女性の強い味方として男女トラブル、さらには労働問題などを得意分野として多く扱う。シングルマザー弁護士として、相談者の悩みを解決するかたわら、家庭では子育てに奮闘している。
■アディーレ法律事務所HP http://www.adire.jp/