2014年08月16日 17時56分43秒
[追記2あり]『彼は本当に特別なので、勝手にやらせておいて全く問題無いんです・・・』by中脇雅裕
テーマ:音響とPerfume
今日は当然ながらこれを入手し帰宅した。
『サウンド&レコーディング・マガジン』・2014年9月号で今日が発売日だ。位相の特集記事もあるので勉強のために買ったと思いきや・・・・
実は"このお方" のインタビュー記事が掲載されているからだ。
中脇雅裕氏と聞けば既にPerfumeファンの方々はピンとくるかもしれない。そうPerfumeのA&R(Artist and Repertoire)を担当していた "あの中脇雅裕氏" だ。
*『ファン・サーヴィス[bitter](2006年)』より。このDVDの名場面の「かっしー、ネコおるー」、「あ~ちゃん、ネコきらーい」は中脇氏のスタジオでのシーンだ。またしっかり者のあ~ちゃんを伺わせる「中脇さん、ありがとうございました!」などのシーンもある。(このスタジオの付近・・・ ヴォーさんと行ったなぁ・笑)
中脇氏のインタビュー記事は非常に少なく、Perfumeや中田ヤスタカ氏に関連した重要なアーカイブとなると思ったので、すかさず購入してみたということだ。それで早速読んでみた。かなり興味深い内容だったが、とりあえずPerfumeと中田氏関連した内容について少し取り上げたいと思う。
まずこの部分から。
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「ライター : 中田ヤスタカさんとはいつごろ知り合ったのですか?」
「中脇 : 初めて会ったときには彼は既にデビューしていて、ちょうどCAPSULEの最初のシングル(2001年)が出た後だったと思います。でも僕はCAPSULEの担当ではなかったので、そのときはちょっと話しただけでした。」
-------------------------------------------------------------------------------------------------
なるほど・・・ 当初は中脇氏はCAPSULEの担当ではなかったのか。これは知らなかった。
それで知り合ったのが "最初のシングル" ということなので『さくら(2001年)』リリース直後に中田氏と知り合ったという時系列なのだろう。
それでこの有名な話につながるのか・・・・
-------------------------------------------------------------------------------------------------
「中脇 : その後、彼はどんどん宅録でやるようになっていって、あるときデモを聴いたらすごいクオリティーだったんです。で、たまたま当時のPerfumeのマネージャーだった友人が "テクノっぽい音楽ができる人を探している" と言っていたので、中田君のデモを聴かせてみたら話がどんどん進んでいって。」
「中脇 : 当初は、中田君がPerfumeをプロデュースをするときだけ僕が制作ディレクターとしてかかわる、という形だったんですが、CAPSULE自体のディレクターも『L.D.K. Lounge Designers Killer(2005年)』からやることになったんです。」
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この経緯は徳間ジャパンコミュニケーションズ" が発刊しているフリーマガジンの『微風(2013年)』での「近田春夫 × 篠木雅博・対談」でも取り上げられている。
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「近田 : プロデューサー中田ヤスタカさんはどういう経緯で、Perfumeをやるようになったんですか?」
「篠木 : 中田さんが手掛ける前は、いろいろな方がプロデュースなさっていまして。当時アミューズに入って二、三年の若い社員がテクノ好きで、ぜひ中田さんとやりたいと。それでお願いして何曲か出来たのが、今のもとになっているんです。業界に入って数年のスタッフのアイデアですよ。非常に新しいものに感じたし、そういう人たちに賭けてみたかったというのが、本当の話ですね。」
「篠木 : なぜなら、若い人はいつも新しいことを考えてるわけですから。僕らは年数が経つと、脳に過去に聴いたものしか収まっていないし、新しいものが来ると拒否反応を示すから。」
○『微風(2013年)』・「近田春夫 × 篠木雅博・対談」より
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この当時のPerfumeは中村チーフマネジャー(故人)体制時であり、他には石井マネージャー、山本(もっさん)マネジャーが在籍したと思われる。中脇氏の友人で "アミューズに入社して二、三年の社員でテクノ好き" とは誰なのだろうか。これが未だに分からない。
まさかロック畑の山本(もっさん)氏ではあるまい(苦笑)。そうなると・・・ 石井氏なのだろうか。興味は尽きない。
しかしこの "テクノ好きのアミューズ側のstaff" がいなければ・・・・ 今のPerfumeは存在しない。
そしてこの辺の話は・・・ 中田氏の特徴を非常によく言い表していると思う。
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「ライター : 音楽ディレクターとして、中田さんとどのように仕事を進めていったのでしょうか?」
「中脇 : 彼は本当に特別なので、勝手にやらせておいて全く問題無いんですよ(笑)。というか、放っておいた方がいいタイプだと最初から思いました。クリエイティビティはあるし、セルフ・プロデュース能力も高いので、外部のノイズが入らないように制作できる環境を作るのが僕の仕事なんだろうなと。」
「中脇 : スケジュールを組んだり、タイアップの打ち合わせを代わりにするなど、ディレクターというよりは、制作に関するマネージャーのような感じですね。」
-------------------------------------------------------------------------------------------------
才能とモチベーションを削がないように口はなるべく出さず、伸び伸びと制作できるように万全の制作環境を整えることに尽力する・・・・ いゃ・・・ 理想の上司じゃん。これ(笑顔)。
さて、中脇氏の話からすると当初のPerfumeの楽曲制作の場合、"クライアントとなるアミューズ側の意向を中脇氏が汲み取り、協議した後に音楽プロデューサーである中田氏にそれを伝える" という流れなのだろうと思う。
Perfumeの音楽プロデューサーを担当し始めた当時は中田氏もまだ若く、"キャリアがある中脇氏のディレクションのもとで制作がなされる" ということで、アミューズ側の信頼を得られたのかもしれない。あるいは緩衝材的な役割を中脇氏にアミューズ側が求めていたということもあるのかもしれない。
しかし最近ではそれにも変化があることが、Perfumeのメンバーのインタビューから垣間見ることができる。そう、新しい作品の制作前に開かれると言われている "Perfumeのメンバーと中田氏とのお食事会" だ(笑)。
これはこれまでアミューズ側と中脇氏が行っていたやり取りを、最近ではメンバーと中田氏の間でも行うようになってきているということが考えられる。これは元来セルフ・プロデュース能力が高かったPerfumeのメンバーも、そのキャリアと伴に益々その能力が高まっていると感じられる。それで、
"Perfumeのメンバーにもプロデュースの一端を担わせよう"
という狙いが感じられる。
さて今回の中脇氏のインタビュー記事はそのほかにも非常に興味深い内容がある。Perfumeや中田ヤスタカ氏の来歴に興味がある方々にはぜひともご購入をオススメしたいと思う。
○A&R(Artist and Repertoire)とは・・・
アーティストの発掘・契約・育成とそのアーティストに合った楽曲の発掘・契約・制作を担当する役職(企画、制作、宣伝なども含まれる)
またアルバムなどの制作時の予算執行権を持たせた調整役を担う。
<○追記・13日pm20:15>
この辺の話も非常に興味深かったので、ご紹介しておくこととする。
-------------------------------------------------------------------------------------------------
※ "過去に手がけた素晴らしいアーティストがビジネス的に成功しなかった" といった話の流れから
「ライター : 良い音楽 = 売れるという単純な構図ではないと気付いたわけですよね。 」
「中脇 : そうなんです。音楽などのクリエイティブなものってすごく難しくて、作っていると愛着もわくし、良いところばかり聴こえることも多くなると思うんです。でもそこはフラットに考える必要がある。」
「中脇 : 例えば、中田君は良いものを作るのはもちろんですが、そこに世の中の動きを見据えた要素も盛り込んでくる。ともかく自然発生的だけのモノは売れない。物事には原因と結果がある。だから売るためのアクションを起こして仕掛ければ、良いことでも悪いことでもちゃんと反応が来るんです。」
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オレは芸術全般の "良し・悪し" を決定する大きな要因は「創作者や演者が自身の表現したいものをしっかりと把握し、それを遺憾なく表現しきれているか」ということに尽きると考えている。しかしそれだけではビジネスとして成立しないことも事実だ。
もし創作者や演者が自身の表現したいものだけを作品に込めているだけなら・・・・ それは趣味の領域でも十分だろう。要するに芸術に取り組むにしても、それが一旦ビジネスとなれば、また別の動機も必要になってくると思うのだ。
さてビジネスとして利益を産むその本質は、
"より良いもの、より求められているものを生み出し、それがユーザーに支持されることで多く消費されることこそが、最終的に多くの利益を生み出す "
というものだとオレは考えている。しかし世の中のニーズだけに着目し、それに対してリニアに的確に応えていれば利益につながるかといえば・・・・ オレはどうしてもそうとも思えない。
趣味ではなくビジネスにする・・・ そう決めた瞬間からその提供者は、"世の中に新しい価値を創造し、それによって生まれてくる楽しく豊かな社会を提案する" ことが責務のようにオレには思えてくる。
例えば、とある分野のエキスパートが英知を絞って、"新しくこういうものが生まれれば、現在よりもさらに楽しく豊かな社会になる" といったような新しい価値観を創造し、世の中の人々にそれ知らしめ、それによって新しい市場を生み出すことも一つの方法だと思う。
中脇氏が言うところの「売るためのアクションを起こして仕掛ける」というのは "新しい価値観を世の中に提案し、市場を創造する" ということだと思う。
では一方で中田氏はどのように語っているかというと・・・・ これがまた興味深い。
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「中田 : 僕は新しいバランスを作りたい。」
---------------- 省略 ----------------
「中田 : 『もうちょっとこういう音楽が多かったらいいのにな』って思うのを変える為には『そう思わない?』っていう投げ掛けとか提案がまずあるんですよ。だから、それは自分の場合CAPSULEの活動を通してやりたいなと思ってる部分なのかもしれない」
---------------- 省略 ----------------
「中田 : 『売れる気ない』とかじゃなくて、だからこそ売れて欲しいんですけど(笑)」
『MARQUEE』vol.99(2013年) より
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中田氏は昔から「新しいバランスを作りたい」と語っている。この新しいバランスとは、
"マジョリティーだけしか認められない世の中はバランスが悪いし、楽しくない。だからもう少しマイノリティーや人々が気付いていない事柄にも関心を寄せてもらえるような提案や仕組みを作っていきたい"
といったようなものだとオレは解釈している。とにかく人々に気付いてもらうためには "まずは世の中に対する提案が必要だ" と中田氏は強く感じていることが分かると思う。そして "その提案に賛同してくれれば、おのずと売れてビジネスとして成立する" とも言いたいのだと思う。
こうなると中田氏が取り組むビジネスや音楽活動の動機は "新しい価値観の提案" が主たるものではないだろうかとさえ、オレには思えてくるが(笑)。
そうなれば・・・・ 中田氏がこのように語るのは当然だといわざるおえない(笑顔)
-------------------------------------------------------------------------------------------------
「中田 : 多くの人が『マニアックな音楽か、大衆的な音楽か』っていう二択で考えがちじゃないですか。でも、その2種類しかないわけじゃない(笑)。大衆曲にマニアックな要素があってもいいと思う。で、僕はやっぱり、大衆曲がカッコイイっていうのが一番いいなと思うんですよ。」
「中田 : だけど、その時に『売れているからカッコイイ』じゃなくて、『カッコイイから売れている』にならなければ意味がないわけで。そのための要素をちゃんと曲には入れたいんですよ。売れた時『なんでこの曲売れているかわからない』って思われるような曲にはなって欲しくはないから(笑)。」
『MARQUEE』vol.74(2009年) より
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<○追記2・16日pm17:56>
この話も非常に感慨深かったので、ご紹介しておくこととする。
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「中脇 : 何のために音楽をやるのかを確認しておくこことが重要だと思っています。"売れたい" ということと "自分の好きな音楽を作りたい" ということは、実は全く別モノですよね。」
「中脇 : "自分が良いと思うものを作れば売れる" という発想は大抵うまくいかない。うまくいったとしてもそれは意識してヒットしたということではなくて、偶然の場合が多いですね。」
-------------------------------------------------------------------------------------------------
実はオレも自身の仕事に取り組む中で、中脇氏と同様のことを痛切に感じている。要するに、
「知識や経験を踏まえた上で "これを世の中に提供したほうが良い" と考えるものと世の中が求めるニーズは、いつも少しだけズレが発生している」
という体験をこれまでのキャリアの中で本当に多く体験してきた。そうなのだ。本当に良いモノなのに売れなくて消えていったものが本当にたくさんある。
したがってオレが心がけているのは「自分が無垢に良いと思うもの + 客観的な視点 + 半歩先に進んだ概念 」というのを意識してプランニングしていたりする。
さてPerfumeがこれまで結果を残せてこれたのは、実は中脇氏のような、ある意味 "客観性の視点" を持った考え方を、メンバーを筆頭に中田氏、MIKIKO氏などのクリエーター陣も共有していたことだと思う。
もしそれぞれが個々に "自分が良いと思うものだけの追求" に終始していたら、人々はこれほどPerfumeにニーズと魅力を感じなかったように思うのだ。
そういった意味で、中脇氏がPerfumeのA&Rを担当していたことは、非常に重要なキーワードだったと感じる今日この頃なのだが。さてどうだろうか。
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『サウンド&レコーディング・マガジン』・2014年9月号で今日が発売日だ。位相の特集記事もあるので勉強のために買ったと思いきや・・・・
実は"このお方" のインタビュー記事が掲載されているからだ。
中脇雅裕氏と聞けば既にPerfumeファンの方々はピンとくるかもしれない。そうPerfumeのA&R(Artist and Repertoire)を担当していた "あの中脇雅裕氏" だ。
*『ファン・サーヴィス[bitter](2006年)』より。このDVDの名場面の「かっしー、ネコおるー」、「あ~ちゃん、ネコきらーい」は中脇氏のスタジオでのシーンだ。またしっかり者のあ~ちゃんを伺わせる「中脇さん、ありがとうございました!」などのシーンもある。(このスタジオの付近・・・ ヴォーさんと行ったなぁ・笑)
中脇氏のインタビュー記事は非常に少なく、Perfumeや中田ヤスタカ氏に関連した重要なアーカイブとなると思ったので、すかさず購入してみたということだ。それで早速読んでみた。かなり興味深い内容だったが、とりあえずPerfumeと中田氏関連した内容について少し取り上げたいと思う。
まずこの部分から。
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「ライター : 中田ヤスタカさんとはいつごろ知り合ったのですか?」
「中脇 : 初めて会ったときには彼は既にデビューしていて、ちょうどCAPSULEの最初のシングル(2001年)が出た後だったと思います。でも僕はCAPSULEの担当ではなかったので、そのときはちょっと話しただけでした。」
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なるほど・・・ 当初は中脇氏はCAPSULEの担当ではなかったのか。これは知らなかった。
それで知り合ったのが "最初のシングル" ということなので『さくら(2001年)』リリース直後に中田氏と知り合ったという時系列なのだろう。
それでこの有名な話につながるのか・・・・
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「中脇 : その後、彼はどんどん宅録でやるようになっていって、あるときデモを聴いたらすごいクオリティーだったんです。で、たまたま当時のPerfumeのマネージャーだった友人が "テクノっぽい音楽ができる人を探している" と言っていたので、中田君のデモを聴かせてみたら話がどんどん進んでいって。」
「中脇 : 当初は、中田君がPerfumeをプロデュースをするときだけ僕が制作ディレクターとしてかかわる、という形だったんですが、CAPSULE自体のディレクターも『L.D.K. Lounge Designers Killer(2005年)』からやることになったんです。」
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この経緯は徳間ジャパンコミュニケーションズ" が発刊しているフリーマガジンの『微風(2013年)』での「近田春夫 × 篠木雅博・対談」でも取り上げられている。
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「近田 : プロデューサー中田ヤスタカさんはどういう経緯で、Perfumeをやるようになったんですか?」
「篠木 : 中田さんが手掛ける前は、いろいろな方がプロデュースなさっていまして。当時アミューズに入って二、三年の若い社員がテクノ好きで、ぜひ中田さんとやりたいと。それでお願いして何曲か出来たのが、今のもとになっているんです。業界に入って数年のスタッフのアイデアですよ。非常に新しいものに感じたし、そういう人たちに賭けてみたかったというのが、本当の話ですね。」
「篠木 : なぜなら、若い人はいつも新しいことを考えてるわけですから。僕らは年数が経つと、脳に過去に聴いたものしか収まっていないし、新しいものが来ると拒否反応を示すから。」
○『微風(2013年)』・「近田春夫 × 篠木雅博・対談」より
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この当時のPerfumeは中村チーフマネジャー(故人)体制時であり、他には石井マネージャー、山本(もっさん)マネジャーが在籍したと思われる。中脇氏の友人で "アミューズに入社して二、三年の社員でテクノ好き" とは誰なのだろうか。これが未だに分からない。
まさかロック畑の山本(もっさん)氏ではあるまい(苦笑)。そうなると・・・ 石井氏なのだろうか。興味は尽きない。
しかしこの "テクノ好きのアミューズ側のstaff" がいなければ・・・・ 今のPerfumeは存在しない。
そしてこの辺の話は・・・ 中田氏の特徴を非常によく言い表していると思う。
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「ライター : 音楽ディレクターとして、中田さんとどのように仕事を進めていったのでしょうか?」
「中脇 : 彼は本当に特別なので、勝手にやらせておいて全く問題無いんですよ(笑)。というか、放っておいた方がいいタイプだと最初から思いました。クリエイティビティはあるし、セルフ・プロデュース能力も高いので、外部のノイズが入らないように制作できる環境を作るのが僕の仕事なんだろうなと。」
「中脇 : スケジュールを組んだり、タイアップの打ち合わせを代わりにするなど、ディレクターというよりは、制作に関するマネージャーのような感じですね。」
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才能とモチベーションを削がないように口はなるべく出さず、伸び伸びと制作できるように万全の制作環境を整えることに尽力する・・・・ いゃ・・・ 理想の上司じゃん。これ(笑顔)。
さて、中脇氏の話からすると当初のPerfumeの楽曲制作の場合、"クライアントとなるアミューズ側の意向を中脇氏が汲み取り、協議した後に音楽プロデューサーである中田氏にそれを伝える" という流れなのだろうと思う。
Perfumeの音楽プロデューサーを担当し始めた当時は中田氏もまだ若く、"キャリアがある中脇氏のディレクションのもとで制作がなされる" ということで、アミューズ側の信頼を得られたのかもしれない。あるいは緩衝材的な役割を中脇氏にアミューズ側が求めていたということもあるのかもしれない。
しかし最近ではそれにも変化があることが、Perfumeのメンバーのインタビューから垣間見ることができる。そう、新しい作品の制作前に開かれると言われている "Perfumeのメンバーと中田氏とのお食事会" だ(笑)。
これはこれまでアミューズ側と中脇氏が行っていたやり取りを、最近ではメンバーと中田氏の間でも行うようになってきているということが考えられる。これは元来セルフ・プロデュース能力が高かったPerfumeのメンバーも、そのキャリアと伴に益々その能力が高まっていると感じられる。それで、
"Perfumeのメンバーにもプロデュースの一端を担わせよう"
という狙いが感じられる。
さて今回の中脇氏のインタビュー記事はそのほかにも非常に興味深い内容がある。Perfumeや中田ヤスタカ氏の来歴に興味がある方々にはぜひともご購入をオススメしたいと思う。
○A&R(Artist and Repertoire)とは・・・
アーティストの発掘・契約・育成とそのアーティストに合った楽曲の発掘・契約・制作を担当する役職(企画、制作、宣伝なども含まれる)
またアルバムなどの制作時の予算執行権を持たせた調整役を担う。
<○追記・13日pm20:15>
この辺の話も非常に興味深かったので、ご紹介しておくこととする。
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※ "過去に手がけた素晴らしいアーティストがビジネス的に成功しなかった" といった話の流れから
「ライター : 良い音楽 = 売れるという単純な構図ではないと気付いたわけですよね。 」
「中脇 : そうなんです。音楽などのクリエイティブなものってすごく難しくて、作っていると愛着もわくし、良いところばかり聴こえることも多くなると思うんです。でもそこはフラットに考える必要がある。」
「中脇 : 例えば、中田君は良いものを作るのはもちろんですが、そこに世の中の動きを見据えた要素も盛り込んでくる。ともかく自然発生的だけのモノは売れない。物事には原因と結果がある。だから売るためのアクションを起こして仕掛ければ、良いことでも悪いことでもちゃんと反応が来るんです。」
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オレは芸術全般の "良し・悪し" を決定する大きな要因は「創作者や演者が自身の表現したいものをしっかりと把握し、それを遺憾なく表現しきれているか」ということに尽きると考えている。しかしそれだけではビジネスとして成立しないことも事実だ。
もし創作者や演者が自身の表現したいものだけを作品に込めているだけなら・・・・ それは趣味の領域でも十分だろう。要するに芸術に取り組むにしても、それが一旦ビジネスとなれば、また別の動機も必要になってくると思うのだ。
さてビジネスとして利益を産むその本質は、
"より良いもの、より求められているものを生み出し、それがユーザーに支持されることで多く消費されることこそが、最終的に多くの利益を生み出す "
というものだとオレは考えている。しかし世の中のニーズだけに着目し、それに対してリニアに的確に応えていれば利益につながるかといえば・・・・ オレはどうしてもそうとも思えない。
趣味ではなくビジネスにする・・・ そう決めた瞬間からその提供者は、"世の中に新しい価値を創造し、それによって生まれてくる楽しく豊かな社会を提案する" ことが責務のようにオレには思えてくる。
例えば、とある分野のエキスパートが英知を絞って、"新しくこういうものが生まれれば、現在よりもさらに楽しく豊かな社会になる" といったような新しい価値観を創造し、世の中の人々にそれ知らしめ、それによって新しい市場を生み出すことも一つの方法だと思う。
中脇氏が言うところの「売るためのアクションを起こして仕掛ける」というのは "新しい価値観を世の中に提案し、市場を創造する" ということだと思う。
では一方で中田氏はどのように語っているかというと・・・・ これがまた興味深い。
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「中田 : 僕は新しいバランスを作りたい。」
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「中田 : 『もうちょっとこういう音楽が多かったらいいのにな』って思うのを変える為には『そう思わない?』っていう投げ掛けとか提案がまずあるんですよ。だから、それは自分の場合CAPSULEの活動を通してやりたいなと思ってる部分なのかもしれない」
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「中田 : 『売れる気ない』とかじゃなくて、だからこそ売れて欲しいんですけど(笑)」
『MARQUEE』vol.99(2013年) より
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中田氏は昔から「新しいバランスを作りたい」と語っている。この新しいバランスとは、
"マジョリティーだけしか認められない世の中はバランスが悪いし、楽しくない。だからもう少しマイノリティーや人々が気付いていない事柄にも関心を寄せてもらえるような提案や仕組みを作っていきたい"
といったようなものだとオレは解釈している。とにかく人々に気付いてもらうためには "まずは世の中に対する提案が必要だ" と中田氏は強く感じていることが分かると思う。そして "その提案に賛同してくれれば、おのずと売れてビジネスとして成立する" とも言いたいのだと思う。
こうなると中田氏が取り組むビジネスや音楽活動の動機は "新しい価値観の提案" が主たるものではないだろうかとさえ、オレには思えてくるが(笑)。
そうなれば・・・・ 中田氏がこのように語るのは当然だといわざるおえない(笑顔)
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「中田 : 多くの人が『マニアックな音楽か、大衆的な音楽か』っていう二択で考えがちじゃないですか。でも、その2種類しかないわけじゃない(笑)。大衆曲にマニアックな要素があってもいいと思う。で、僕はやっぱり、大衆曲がカッコイイっていうのが一番いいなと思うんですよ。」
「中田 : だけど、その時に『売れているからカッコイイ』じゃなくて、『カッコイイから売れている』にならなければ意味がないわけで。そのための要素をちゃんと曲には入れたいんですよ。売れた時『なんでこの曲売れているかわからない』って思われるような曲にはなって欲しくはないから(笑)。」
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<○追記2・16日pm17:56>
この話も非常に感慨深かったので、ご紹介しておくこととする。
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「中脇 : 何のために音楽をやるのかを確認しておくこことが重要だと思っています。"売れたい" ということと "自分の好きな音楽を作りたい" ということは、実は全く別モノですよね。」
「中脇 : "自分が良いと思うものを作れば売れる" という発想は大抵うまくいかない。うまくいったとしてもそれは意識してヒットしたということではなくて、偶然の場合が多いですね。」
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実はオレも自身の仕事に取り組む中で、中脇氏と同様のことを痛切に感じている。要するに、
「知識や経験を踏まえた上で "これを世の中に提供したほうが良い" と考えるものと世の中が求めるニーズは、いつも少しだけズレが発生している」
という体験をこれまでのキャリアの中で本当に多く体験してきた。そうなのだ。本当に良いモノなのに売れなくて消えていったものが本当にたくさんある。
したがってオレが心がけているのは「自分が無垢に良いと思うもの + 客観的な視点 + 半歩先に進んだ概念 」というのを意識してプランニングしていたりする。
さてPerfumeがこれまで結果を残せてこれたのは、実は中脇氏のような、ある意味 "客観性の視点" を持った考え方を、メンバーを筆頭に中田氏、MIKIKO氏などのクリエーター陣も共有していたことだと思う。
もしそれぞれが個々に "自分が良いと思うものだけの追求" に終始していたら、人々はこれほどPerfumeにニーズと魅力を感じなかったように思うのだ。
そういった意味で、中脇氏がPerfumeのA&Rを担当していたことは、非常に重要なキーワードだったと感じる今日この頃なのだが。さてどうだろうか。
Sound & Recording Magazine (サウンド アンド レコーディング マガ.../サウンド&レコーディング・マガジン編集部
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¥3,394
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