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つないだ手と手の「M@ASTERPIECE」。“THE IDOLM@STER 9th ANNIVERSARY WE ARE M@STERPIECE!!”名古屋公演初日レポート(後編)

2014.08.18 23:35

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『アイドルマスター』の9周年ライブツアー“THE IDOLM@STER 9th ANNIVERSARY WE ARE M@STERPIECE!!”名古屋公演初日が8月16日、愛知県・日本ガイシホールで行なわれ、中村繪里子(天海春香役)、今井麻美(如月千早役)、平田宏美(菊地 真役)、滝田樹里(音無小鳥役)、下田麻美(双海亜美・真美役)、原 由実(四条貴音役)が出演した。

今回は名古屋公演初日の模様を2回に分けて詳細レポート中なので、ライブの概要と前半については「前編」を先に確認してほしい。

 

“カバー”を超えろ!!

 

原 由実が四条貴音役として初めて『アイドルマスター』の舞台に上がったのは、2008年にパシフィコ横浜で行われた“Go to the NEW STAGE! THE IDOLM@STER 3rd ANNIVERSARY LIVE”でのこと。同じく同日デビューの我那覇 響役・沼倉愛美たちとともに“『アイドルマスターSP』に登場するライバル事務所・961プロからの刺客”として「オーバーマスター」を披露して鮮烈な印象を残した。当時の原は短期間で『アイドルマスター』の膨大な楽曲の数々をレコーディング。のちに貴音と響は765プロに移籍し、原と沼倉もまた、765プロの欠かせない仲間となった。翌年の夏からは今井・沼倉とともに『THE IDOLM@STER STATION!!!』のパーソナリティとなり、アイマスの看板のひとつを背負うようになった。

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そんな原について思い出されるのが、デビューから1年、4周年ライブで今井とのデュオで歌った「蒼い鳥」のことだ。“歌唱力”の面ではデビュー直後から高い水準にあった原だが、この時のステージでは「蒼い鳥」歌唱時の今井の圧倒的な存在感と没入感になんとかついていく感じで、いつか原がもっと成長したときにこの両翼を見たいなと思ったことを覚えている。それだけに、今回のライブで原がソロパートのトリを務めるというのは驚きだった。セットリストにその意図があったかはわからないが、少なくともMCの雑談の中で「今回はトリではありません」と笑っていた今井はそのことを意味を持って捉えていたのではないかと思う。

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この6年間の原の成長がいちばん感じられる楽曲は、今回のライブでも披露した「風花」だと思う。8周年ライブ大阪公演での「風花」は鳥肌が立つほど圧倒的な表現力だった。路線を継承した「恋花」の優しくも切ない表現も、今の原だから歌えるものだろう。

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だが、今回のライブのソロコーナーの「なかなか歌わない楽曲や、意外な一面を見せる」というテーマだと、原と貴音はなかなか料理が難しい。デビュー曲の「フラワーガール」を見てもわかる通り、貴音はかわいい系もどんとこいである。どんな楽曲にでも対応できる地力があるし、楽曲に合わせてイメージを変える柔軟性もある。そんな原と貴音のステージで意外性や驚きを出すにはどうすればいいのか。

その答はカバーコーナーにあった。今回のツアーでは「当日のライブに参加していない7人の楽曲を、6人でカバーする」ために、カバーコーナーでひとりはダブルヘッターとなる。大阪では沼倉がその役を担当し、765プロの若きエースだな……という印象を受けた。そして今回の名古屋公演では原がそのポジションを担当し、美希(長谷川明子)の「ふるふるフューチャー☆」と響(沼倉愛美)の「Next Life」を歌った。

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「Next Life」のイントロが流れた瞬間、会場がかなりざわついた。アイマスには幾つか、その人専用曲と言うべき曲がある。たかはしの「隣に…」や今井の「約束」など、個人の能力や属性に当て書きに近い作り方をした結果、カバーが難しい、あるいは歌うのに覚悟がいる楽曲の数々だ。「Next Life」は遠山明孝がアイマスにサイケデリックトランスの新しい流れを持ち込んだ楽曲で、沼倉愛美のライブイメージを決定づけた楽曲でもある。アイマスのライブでダンサーのサポートを受けることはよくあるが、ダンサー4人とほぼ同じフリを踊りながら「ダンサーを従えて」と形容したくなるのはこの曲の沼倉ぐらいかもしれない。ダンスパラメーターに極大に振りながらも表現力が要求される、そんな楽曲を原が歌ったらどうなるのかは、まったく想像がつかない。高いハードルを設定することで演者のポテンシャルを引き出す。これはもうお祭り的なカバーコーナーではないな……と襟を正して聴き入った。

「貴方の遺伝子が、呼んでる」。冒頭の吐息がかった呟きにゾクッとする。沼倉の歌唱が曲調に合わせ、硬質な内に青い炎を秘めたようなものだとすれば、原の歌唱は“妖艶”。温度を消すのではなく、磨き上げてきたありとあらゆる表現を楽曲に乗せていく。一番ではテンションをほんの少し抑えて、終盤に向けて徐々にロックテイストのアクセルを開けてさらに大きな山を作っていく歌唱には最後まで圧倒された。ダンスや歌唱で沼倉をトレースするのではなく、“原 由実にしか歌えない「Next Life」”がそこにあった。原が沼倉のように踊ることはできないが、沼倉にも原と同じステージはできないはずだ。

最後まで聴き終えて思ったのは、名古屋が終われば、たぶんもう原がこの曲を歌う姿を見ることはできないだろうな、ということ。だが、本人のソロパートの「風花」で、ほんの少しだが、今までの「風花」ともまた違うけれん味を感じた気がした。ダンスと努力の才能に恵まれた同期のパフォーマンスと、天才コンポーザーが生み出した楽曲と真剣に格闘した経験は、きっと原がさらに成長するための糧になったに違いない。

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