松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

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世界中で婚姻年齢が高齢化しており、出産年齢も高齢化しています。「何歳まで妊娠できるのか」「何歳まで待って良いのか」、誰もが知りたい情報です。しかし、その答えを出すのは簡単ではありません。1960年代にピルと子宮内避妊具の使用が広まったため、「自然に任せるとどうなるか」わからなくなったためです。しかし、18~19世紀までには、避妊という手段が存在しなかったため、「自然に任せた場合」のデータが存在します。現在でも、宗教的あるいは文化的に避妊をしない人々が集まる集団があります。これまでは、このような少数の集団に基づくデータしか報告されていませんでしたが、本論文は、17~19世紀の異なる時代の世界6カ国のデータをまとめた貴重な報告です。

Hum Reprod 2014; 29: 1304(オランダ)
要約:世界6カ所の異なる時代の自然妊娠のデータ(避妊法が存在しない時代)を分析しました。条件は、初婚から50歳まで同一のパートナーであることで、合計58,051名となります。
1 フランス     1670~1790年婚姻  3,518名
2 ケベック(カナダ)1638~1796年婚姻 10,817名
3 ドイツ      1651~1889年婚姻  1,566名
4 オランダ     1812~1893年婚姻 28,097名
5 ユタ(米国)   1773~1875年婚姻 11,402名
6 ケベック(カナダ)1840~1899年婚姻  2,652名
時代と地域が異なっても、最後の出産を行った年齢に有意差はありませんでした。また、出産間隔は約2年と一定でした。したがって、婚姻年齢が早ければお子さんの数は多く(15~20歳で8~12人)、婚姻年齢が遅ければお子さんの数は少なくなりました(35~60歳で0~3人)。しかし、婚姻年齢が違っても、最後の出産を行った年齢は約41歳で変わりませんでした。また、妊娠していない方は、婚姻年齢増加につれて増加し、15~20歳で3~5%、30~35歳で8~11%でした。
最後の出産を行った年齢をプロットするとS字カーブとなり、20歳で<3%、25歳4.5%、30歳7%、35歳12%、38歳20%、ここから急速に増加し、41歳50%45歳90%、50歳で100%となりました。したがって、自然妊娠しなくなる時期は41歳前後、38歳から45歳の間となります。

解説:非常に貴重なデータだと思います。
本論文の著者は、以上の結果から次のような指導を提案しています。

32~34歳:2人以上のお子さんを考えている場合には、あまりのんびりしない方がよいでしょう
30代後半:トライすれば、まだ大丈夫でしょう
40代前半:すぐにトライしてください
*体外受精の成功率は、自然妊娠と同じようなカーブを描いて、加齢とともに低下します。体外受精をすれば年齢の要因を打ち消すことができるというのは誤りです。

この提案は多数のデータに基づくものであるため、極めて強い説得力があります。
自然妊娠を目指す方も体外受精の方も加齢に基づく妊孕性の低下を認識して欲しいと思います。
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