特定秘密保護法:人権侵害の恐れ、検討過程で官僚認識
毎日新聞 2014年08月18日 09時48分(最終更新 08月18日 11時29分)
後者は、秘密保全法制を提言した政府の有識者会議の議事録が作成されていなかったことが、同年3月に毎日新聞などの報道で明らかになったことを指すとみられる。
官僚たちは常に外部からの批判を意識していたことが読み取れる。内調からも次のような意見が出た。
<(秘密の対象を)絞っているということをメッセージとして出さないと、いつまでもマスコミなどに何でも秘密だと言われ続けることになる>(12年2月20日「検討メモ」)
主要な新聞記事は協議のたびに内調から法制局に手渡された。12年8月には、日本弁護士連合会の反対決議(12年5月)や日本新聞協会の意見書(11年11月)をまとめた文書が作られた。それぞれの主な主張に下線が引かれ、日弁連の指摘と法案を対照した表も作られている。
しかし、国民の意見への反応は素っ気ない。11年に実施されたパブリックコメント「秘密保全に関する法制の整備に係る意見募集」の結果について「何か気づいた点はあるか」という内調の質問に、法制局は次のように答えている。
<反応としては、こんなものではないか。建設的な議論をしようとする人はあまりいないのだろう>(11年12月16日「検討メモ」)
法案の検討にパブリックコメントが反映されたことを示す記録は見当たらない。
◇政権交代影響なし
政治家や政党の主張に対する言及はほとんどない。数少ない例は次のような法制局の意見だ。
<尖閣ビデオが特別秘密(現特定秘密)に該当するというと、もともと(秘密保全法を)やれと言っている野党まで敵に回してしまうのではないか>(11年10月18日「検討メモ」)
民主党政権下で実質的な法案作りが始まったのは11年9月。きっかけは、10年に尖閣諸島沖で海上保安庁の巡視船が中国漁船に衝突された事件の録画映像が、ネットに流出したことだ。当時野党だった自民党は、国民に映像を公開するよう求めた経緯がある。
11年11月30日の「検討メモ」には次のように記されている。
<法制局幹部会では、尖閣ビデオが本法制の対象にならないということで意見が一致していた>
発端になった漏えい情報は、この時点で特別秘密には当たらないと判断されていたことが分かる。一方で法制局からは、こんなぼやきも出ている。
<この(野田)政権における法案の優先順位付けがよく分からない>(12年2月17日「検討メモ」)