Java EE 7/8の新機能を先取り! Oracle WebLogic ServerとOracle Coherenceが12.1.3にバージョンアップ
日本オラクルは先頃、「Oracle WebLogic Server 12c」と「Oracle Coherence 12c」の最新バージョンとなる12.1.3の提供を開始した。Java EE 7/8の新機能も一部サポートした両バージョンの主な強化ポイントを紹介する。
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Oracle WebLogic Server 12.1.3はJava EE 7の4つの新APIに対応。"モバイルファースト時代"のアプリケーション基盤として機能強化
日本オラクル Fusion Middleware事業統括本部 シニアマネジャーの新井庸介氏
日本オラクルは2014年7月、Oracle WebLogic Server 12cとOracle Coherence 12cの最新バージョンとして「Oracle WebLogic Server 12.1.3」と「Oracle Coherence 12.1.3」の提供を開始した。これら新バージョンの特徴は、Java EE 7や同8の新機能の一部にいち早く対応するなど、意欲的な機能強化が図られている点だ。両製品の担当マネジャーに聞いた新バージョンの強化ポイントを紹介しよう。
まずはOracle WebLogic Server 12.1.3の新機能から見ていきたい。同製品の最大の目玉となるのは、Java EE 7の4つの主要APIに対応した点だ。まだ一部ではあるものの、"Java EE 7対応"は商用アプリケーション・サーバとしては国内初となる。今回対応したのは次の4つのAPIだ。
- Java API for WebSocket(WebSocket API)
- Java API for JSON Processing(JSON API)
- JAX-RS 2.0
- JPA(Java Persistence API) 2.1
1つ目のWebSocket APIは、その名のとおりHTML5のWebSocketプロトコルを扱うためのAPIだ。WebSocketはOracle WebLogic Server 12.1.2でも独自APIでサポートしていたが、本バージョンからJava EE 7の標準APIに対応した。これに伴って独自APIの使用は非推奨となったが、もちろん引き続きサポートは提供される。
2つ目のJSON APIは、JavaScriptオブジェクト(JSON)をJavaプログラムで扱うためのAPIだ。以上のWebSocket APIとJSON APIは、Java EE 7で新規に追加されたAPIである。
3つ目のJAX-RSはRESTインタフェースを提供するAPIであり、JAX-RS 2.0では新たにクライアントAPI(Client API)が定義されるなどの仕様変更が行われた。
4つ目のJPAは、データソースを抽象化するためのAPIだ。JPA 2.1は同2.0からのマイナー・アップデートであり大きな変更はないが、ストアドプロシージャが使用可能となったほか、データの一括更新などが行えるようになっている。
これらのAPIに先行対応した背景を、日本オラクルの新井庸介氏(Fusion Middleware事業統括本部 シニアマネジャー)は次のように説明する。
「Oracle WebLogic Server 12.1.3は『開発生産性能の向上』をテーマに機能強化が図られており、特に近年、急速にニーズが高まっているモバイルやHTML5に関連した機能の拡充に力を入れています。Java EE 7では、モバイル関連の機能が大幅に強化されましたが、それらをいち早くお使いいただけるよう、モバイルと関連性の高いAPIに先行対応したのです」
4つのAPIのうち、WebSocketに関しては性能面の改善も図られた。オラクルが実施したベンチマークによれば、6万のクライアントに対して毎秒2万9,000メッセージを送信することができたという。
加えて、Oracle WebLogic Server 12.1.3には、独自機能として「WebSocket Emulation」が搭載された。
「アプリケーションのWebSocket対応に関してよくご相談いただくのが、古いバージョンのWebブラウザやネットワーク機器の制限などからWebSocketを利用できない場合の対処方法です。通常はif文によってWebSocket対応環境と非対応環境で処理を切り替えるといった具合に対処しますが、新たに追加されたWebSocket Emulationを使えば、そうしたアプリケーション側での対応は不要になります。具体的には、Oracle WebLogic Server 12.1.3に同梱されるクライアント向けJavaScriptライブラリを利用することで、WebSocket非対応環境では自動的に代替プロトコルを使った通信が行われます。この機能により、WebSocketの普及がさらに進むと期待しています。また、モバイル・アプリケーション開発の効率向上にも大きく貢献できるでしょう」(新井氏)
このほか、Oracle WebLogic Server 12.1.3では、次のような運用管理面の機能強化も図られている。
- RESTインタフェースを介してWebLogicサーバを管理するためのAPI「REST Management API」の機能が強化され、より広範な管理が可能となった
- ビルド・ツール「Maven」との連携機能が強化され、ビルドと同時にデプロイや構成を行うことが可能になったほか、同機能とWLST(WebLogic Scripting Tool)の連携が強化された
新バージョンに合わせて開発ツールも機能強化。マルチプラットフォーム対応のモバイル・アプリ開発が可能に
Oracle WebLogic Serverのバージョンアップに伴い、オラクルが提供する開発ツールも12.1.3にアップデートされている。
まず、オラクルが提供する統合開発環境(IDE)の最新版「JDeveloper 12.1.3」では、オラクル独自のWebアプリケーション・フレームワーク「ADF(Application Development Framework)」がアップデートされ、Oracle WebLogic Server 12cでも利用可能になった(従来バージョンは11g対応)。
「ADFはデータベースとの連携機能なども備えたフルスタックの高機能なWebアプリケーション・フレームワークですが、もちろんJava EEアプリケーションと組み合わせて利用することも可能です。ガントチャートやバブルチャートなどの多彩なグラフや、地図上に各種データをマッピングした画面などを容易に作ることができます」(新井氏)
また、Eclipse用のプラグイン「Oracle Enterprise pack for Eclipse」も12.1.3にバージョンアップされた。こちらはベースとなるEclipseがバージョン4.4になったほか、オラクルのモバイル・アプリケーション開発用フレームワーク「MAF(Mobile Application Framework)」に対応した。
「MAFの最大の特徴は、iOSとAndroidで動作するマルチプラットフォーム対応のモバイル・アプリケーションを開発できる点にあります。ADFと同様、MAFでも多彩な画面コンポーネントを使ったリッチなクライアント・アプリケーションを作ることができます」(新井氏)