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【放送芸能】

平和憲法の尊さ 鋭く楽しく こまつ座「兄おとうと」17日から

 こまつ座公演「兄おとうと」(井上ひさし作、鵜山仁演出)が東京・新宿の紀伊国屋サザンシアターで上演される。安倍内閣が憲法解釈を変えて集団的自衛権行使容認に舵(かじ)を切るなか、「憲法とは何か?」といった問題についても鋭く斬り込んだ井上さんの名作だ。 (山岸利行)

 戦争放棄などを掲げた日本国憲法九条を守る「九条の会」のメンバーとして積極的に発言していた井上さんの「兄おとうと」は二〇〇三年初演。初演から十年余がたち、四度目の上演となる今回、作品の持つ意味が大きくなってきている。

 大正デモクラシーを代表する著名な政治学者で、民本主義を唱えた吉野作造(辻萬長(かずなが))と、兄とは考え方がかけ離れた高級官僚の弟・信次(大鷹明良)を中心にさまざまな人間模様を描く。

 「政治は、国民の考えにもとづいて行われるべきだ」「いかなる場合も憲法は法律に優先する」といった台詞(せりふ)が随所にちりばめられ、国の在り方を論じるが、決して堅苦しくはなく、歌あり、踊りありのにぎやかな舞台。

 初演から作造役を演じている辻は「初演の時は、憲法の問題はそれほど意識はされていなかったと思う」と振り返り、「世の中が井上さんの作品についてきたのでは」と、井上さんに先見の明があったことを話す。今回はラストシーンに「集団的自衛権」「解釈改憲」といった文字が舞台上に投影される新たな演出が施される。

 井上さんは劇中、「三度のごはん きちんとたべて 火の用心 元気で生きよう きっとね」と歌わせて人間の理想をシンプルに表現する。辻は「争いがなく、みんなが食べて、生きていければ幸せというメッセージだと思う」。

 特定秘密保護法で国民の「知る権利」が侵される恐れが出てきて、集団的自衛権行使容認で平和憲法に危機が迫るが、辻は「井上先生が生きていらっしゃったらどう思われるでしょうか」と話しながら、「今回の公演で憲法はこんなにも大事なものなんだと分かってもらえたら」と上演に意欲を見せる。

 「兄おとうと」は八月十七日〜三十一日。六千五百円。こまつ座=(電)03・3862・5941。

 

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