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【秘密保護法 言わねばならないこと】

(27)武力行使を白紙一任 弁護士 早田由布子氏

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 特定秘密保護法のもとで集団的自衛権が行使されるとすれば、どうなるのか。自衛隊が海外で他国のために戦い、人を殺したり殺されたりすることが内閣に白紙一任され、その根拠が国民にも国会にも明かされず、検証できない恐れがある。

 安倍政権が決めた集団的自衛権を行使する新たな要件に「密接な関係にある他国への攻撃」とある。分かりやすい要件に見えるが、米国がベトナム戦争に介入するきっかけになった米艦艇への攻撃は、米国の自作自演だった。イラク戦争の根拠にされた大量破壊兵器の保持も、実際はなかったというのが通説だ。開戦の口実がつくられたものであることは決して珍しくない。

 だが、こうした情報も「特定秘密」にされれば、漏らした役人は最高で懲役十年が科せられる。市民が調べるだけでも罪に問われかねず、闇に葬られてしまう。

 また、集団的自衛権の行使は「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、権利が覆される明白な危険」がある場合に限るとされるが、具体的にどんなケースが該当するのか曖昧だ。

 安倍政権は米軍を守らなければ同盟関係が損なわれ、有事で日本を守ってもらえなくなるから「わが国の存立が脅かされる」という。そんな理屈で、米国への攻撃だけで行使できると考えている。「限定的容認」だと強調するが、歯止めは何もないに等しい。

 集団的自衛権を行使する場合、原則として国会の承認を求めるともいう。しかし、秘密保護法では国会議員も秘密への接触は厳しく制限される。国会の監視機関のメンバーなら知ることはできるかもしれないが、他の議員には話せない。情報が隠されたままで、どうやって議員は承認するかどうか判断するのか。国会のチェックも形だけになる。

 <はやた・ゆふこ> 1983年生まれ。弁護士。「明日の自由を守る若手弁護士の会」事務局長。著書に「これでわかった!超訳・特定秘密保護法」(共著)など。

 

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