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【群馬】

いとこと再会「遺骨は母国に」 ハンセン病元患者、在日韓国人の金さん

固い握手を交わす金夏日さん(左)と金夏慶さん=草津町で

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 ハンセン病、在日韓国人という二重の差別と闘ってきた国立療養所「栗生(くりう)楽泉園」(草津町)の元患者、金夏日(キムハイル)さん(87)を今月、母国のいとこが訪問した。数回目の来日となる金夏慶(キムハギョン)さん(75)は初めて長男(51)を同行。夏慶さんは「お互い高齢でこれが最後の面会と思う。長男に、夏日さんの遺骨を母国に持ち帰らせたい」と夏日さんと固い握手を交わした。 (菅原洋)

 「体調の悪い自分はもう、先が長くない。会えて本当にうれしい」。ベッドの上で、夏日さんは感極まった表情を浮かべた。

 夏日さんは一九二六年に韓国で生まれた。日本に先に来ていた父親を追って少年期に来日。四一年に発症し、二十歳のころに楽泉園に隔離され、その後に両目を失明した。

 本を点字で読もうとしたが、病気が原因で指がまひし、断念した。舌先で点字を感じ取る「舌読」を身に付けようと、舌から血がにじむまで努力を積み重ねた。

 そんな夏日さんをさらに苦しめたのが、在日韓国人を含む外国人への差別だった。

 「日本人の患者たちは障害年金がもらえたのに、自分は外国人を理由に除外された。本当に惨めな差別待遇だった。受給を国に働き掛け、実現まで何年もかかった」。夏日さんが振り返った。

 ずっと続けていた舌読の努力も実り、九一年に随筆で県文学賞を受賞している。

 夏慶さんは八〇年代に初めて来日。二人の父同士が兄弟という間柄だ。いとこは全部で七人いたが、今はこの二人しか残っていない。来日は数年ぶりだ。

 韓国中部の大田(テジョン)市に住む夏慶さんによると、韓国でも過去にハンセン病患者への差別はひどかったが、最近は少なくなった。夏日さんが亡くなれば、一族の墓に埋葬したいという。

 「夏日さんは病気のために結婚できず、身寄りがない。遺骨を見守るのは、自分たちしかいない」と話す。日本では、多くの元患者が根深い差別から故郷に埋葬されないことを知り、言葉少なにこう話した。「日本人も元患者の悲しみを理解し、肉親の愛情があれば、故郷に埋葬するはずなのに」

 

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