アップルのデジタルパーソナルアシストのSiriの開発者チームは、現在のSiriの機能をさらに進化させた次世代のデジタルアシスタントを目指して新たな開発を開始したようです。
Siriの拡張パック、Vivの開発を開始
次世代のデジタルアシスタントは「Viv」と呼ばれるプロジェクトで、Siriの創業メンバーであるAdam Cheyer氏は、「革新的な新しいAI(人工知能)」と「無限の可能性」を秘めており、究極的には「ソフトウエアの組み立て方が根本的に変わることになる」と述べています。
Cheyer氏は、Dough Kittlaus氏、Chris Brigham氏とともに現在Siriの開発者として知られていますが、以前は国防総省の研究部門で言語処理能力を研究していた調査会社SRI Internationalで研究をしていました。
Cheyer氏ら3名は、2010年にSiriをアップルに売却し、2011年にiPhone4SでSiriがデビューした後、一人ずつアップルを退社していました。その後、2013年には多くの人工知能の専門家を招集し、再度プロジェクトVivを立ち上げたようです。
Vivは非常に高い目標を掲げているのですが、Vivはある意味「Siriの拡張パック」と考えられています。つまり、Siriは自然言語によってさまざまな処理を可能にする、初めての革命的なデジタルアシスタントとしてデビューしましたが、Vivではさらにこれが進化すると思われています。
Vivでは人工知能を再定義
概念的にはVivは人工知能を再度定義し直すとも考えられるのですが、実際は多くのバックエンドサービスを理論的に複合処理すると考えることができます。
例えば、弟の家に行く途中で、ラザニアにあう安いワインを買いたいと思った時に、システムに話しかければ、自分の嗜好にあったワインをデータベースから選んで、お薦めのワインと購入する店舗のリストを教えてくれるということが可能になるのです。
上記の例は非常に興味深いのですが、Google Nowの元プロダクトチーフのVishal Sharma氏は「このような質問に答えられるシステムは世界中どこを探してもない」とコメントしています。
Google Nowには限界か
Googleにはさまざまな情報源から収集した検索情報を用いて、検索エンジンの検索結果を拡張するために使用している知識ベース「ナレッジグラフ」があります。VivのKittlaus氏は、「『エイブラハム・リンカーンが生まれた街は?』という質問に対しては、Google Nowは場所を答えることができますし、その後に『その街の人口は何人?』という質問も大丈夫です。しかし、『エイブラハム・リンカーンが生まれた街の人口は何人?』という質問にはナレッジグラフを利用しても残念ながら答えられません」と述べています。
Google Nowでは答えられない上の質問ですが、Siriでは既に答えることができます。これはWolfram ResearchのWolfram Alphaと呼ばれるナレッジエンジンがSiriに統合されているから可能になっているのですが、Siriはエイブラハム・リンカーンが生まれた街はケンタッキー州のHodgenville、2012年のデータで人口が3,232人だったと即座に答えてくれます。
次期iOS8ではSiri機能が強化
アップルはSiriの導入当初からiPhoneやiPadのハードウエアとの連携はもちろん、機能強化に力を入れており、この秋にリリースされる次期iOS8ではリアルタイムな言語認識機能や楽曲の認識機能などが追加される予定となっています。
Siriに続く、Vivの潜在的な可能性は非常に大きなものがありますが、まだ可能性の段階だと述べるのはSiriの投資家の一人であるGary Morgenthaler氏です。しかし、同氏は「Vivは必ず実現してくれると信じているが、具体的にいつどのようになるのかはわからない」とコメントしています。
日本ではまだまだ利用率が低いSiriですが、機能強化によりさらに便利なユーザー体験が期待できそうですね。
参照元 : Apple Insider
執 筆 : リンゴバックス