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【社会】

保護観察 少年らに義務付け 社会貢献 最大5日

 昨年六月の改正更生保護法成立で、少年院の仮退院者など保護観察対象者の一部に義務付けられることになった社会貢献活動について法務省が原則一日二〜五時間、最大五日間とする方向で検討していることが、同省への取材で分かった。

 新制度が来年六月をめどに始まるのを前に、全国の保護観察所は七月から試行を本格的にスタート。運用面の課題を探るとともに、福祉施設など活動の受け皿を開拓したい考えだ。

 更生保護法は、保護司の呼び出しに応じるなど全ての保護観察対象者が守るべき「一般順守事項」と、対象者ごとに決める「特別順守事項」を規定。改正法では、特別順守事項に社会貢献活動が新たに加わった。社会貢献活動は刑罰と違い、社会の一員としての意識を育て規範意識の向上を図るのが目的。施行後は保護観察所などの判断で義務付け、拒否すれば仮釈放などが取り消されることもある。

 法務省は六月、保護観察所に通達を出し、刑務所や少年院から仮釈放、仮退院する際の面接で本人の同意を得た上で、七月から公園、駅での清掃や福祉施設での介護などを一日二〜五時間、最大で五日間実施するよう求めた。

 法務省は二〇一一年度から、東日本大震災のがれき処理や保育士のサポートなどに一日だけ参加させる簡単な試行を開始。制度開始まで一年を切ったことから、施行後の運用に近い形に変えた。

 改正更生保護法は昨年六月、懲役や禁錮刑の一部を執行した後に残りの刑期を猶予する「一部執行猶予制度」の創設を盛り込んだ改正刑法とともに成立した。

◆受け皿探し 難しく

 来年六月をめどに導入される保護観察中の社会貢献活動。全国の保護観察所は市民団体などに依頼し、さまざまな形で試行を始めているが、受け皿探しの難しさが課題となっている。

 仙台市若林区の荒浜地区では、保護観察中の少年らがボランティア団体と一緒に東日本大震災で出たがれきを撤去したり、側溝の泥をかき出したりしている。二〇一二年に始め、既に十三回を数えた。

 群馬県高崎市の保育園では一二年九月から、園児と歌を歌ったり、貼り絵を作ったりして交流。ほかにも障害児施設の遊具磨き(岐阜)や高齢者施設での絵本の朗読(静岡)、駅の清掃(青森、愛媛)など活動は幅広い。

 法務省は活動の場を提供してもらおうと市民団体や企業に働き掛けているが、ある保護観察所の担当者は「受け入れ側が万が一何か起きないかという不安を持ち、断られることも多い」と打ち明ける。

 一方、参加した少年らからは「人の役に立てた」「相手から笑顔をもらえてうれしかった」といった声が寄せられているという。

 法務省保護局の担当者は「誰からも必要とされていないと感じて非行に走った少年たちも、社会から必要とされれば立ち直るきっかけになる」と力を込め、「とにかく受け入れ先の確保を急ぎたい」と話している。

 <保護観察> 罪を犯した人や非行少年を社会の中で更生させて再犯を防止するため、国が一時的に監督し社会復帰を支援する制度。(1)家裁で保護観察処分を受けた少年(2)少年院の仮退院者(3)刑務所の仮釈放者(4)保護観察付き執行猶予判決を受けた人−などが対象。保護観察官と民間ボランティアの保護司が定期的に面接して生活指導や就職の手伝いをする。対象者に合わせて「過度の飲酒の禁止」「覚せい剤をやめるためのプログラム受講」などの特別順守事項を定めることができる。

 

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