昨年度の食料自給率は39%(カロリー換算)で、4年続けて横ばいだった。政府が目標とする50%への道筋は、全く見えないのが実情である。

 カロリー換算では、国産牛でも飼料を輸入に頼れば「100%自給」ではなくなる。消費者が安さを求め、価格では海外産に太刀打ちできない品目が少なくない現状を考えると、カロリー換算の数値を絶対視することは賢明だろうか。

 国内での生産をできるだけ増やそうとする姿勢は大切だが、自給率の引き上げにこだわりすぎれば、効果の乏しい政策に巨費を投じることになりかねない。その代表例は、コメの生産調整(減反)とセットで進めてきた麦や大豆などへの転作奨励策だろう。

 減り続けるコメの消費に合わせて生産を絞る。余った田んぼで輸入頼みの作物を作れば、自給率も上がる。

 一見合理的だが、「費用対効果」があいまいなまま、転作補助金は膨らみがちだ。安い外国産に押される麦や大豆の生産は頭打ちで、現に耕作放棄地は増え続けている。

 政府はコメ政策を転換すると決めた。県ごとに置く機構を通じて田の集約と生産コスト削減を進め、4年後には国は減反から手を引く。

 それでも、需要に合わせて作るという考え方はそのままだ。麦や大豆から家畜に食べさせる飼料用米に力を入れる方針だが、非効率な補助金行政が温存されかねない。

 減反政策がもたらした「おいしくて高級」に偏ったコメ作りを多様化し、「より安く」も追求する。競争力を高めることが輸出への道を開き、国内生産の基盤を守ることにつながる。主食であるコメを中心に、そうした取り組みを進めるべきだ。

 海外からの調達が安定するよう相手国との関係を強め、廃棄や食べ残しによる「食品ロス」を減らすことも欠かせない。

 その意味で、日豪経済連携協定(EPA)に「輸出規制を新設・維持しないよう努める」といった規定を盛り込んだことは注目に値する。豪州以外の農畜水産物の輸出国からも同様の約束を取り付けてほしい。

 食品ロスは政府の推計で年500万~800万トンとされ、コメの生産量にも匹敵する。賞味期限から逆算して商品の受け取りに厳しく臨む小売業界の慣行を見直し、家庭での食生活を改めるなど、ただちに取り組めることは少なくない。

 食の確保は、自給率頼みでなく、多角的に考えたい。